Kindle以後ノート(21):E-Reader問題 (後)

barnes-noble-nook-300x165Kindleの初代 (2007)はミニ・キーボードを、Nookの初代(2009)は、コントロール用のカラー・パネルを付けていた。どちらも今日見られないものだ。コストの割に実用性が低かったためと思われる。定着したのは最もシンプルな「スレート」だった。それでも印刷された冊子本と比べて劣るとされたのは「表紙」である。

表紙はPOPか本へのオマージュか

Great Gatsby特別にデザインされた表紙は何のためにあるのだろう。本にとって「表紙」は本質的なものではなかったが、1950年代以後はしだいに商品としての本に必須のものとなった。書店で然るべき扱いを受けるため、マーケティングのためである。表紙は、書店での本と消費者との出会いのために用意したメディアであり、版元謹製のポスターである。費用的には特別な重みがあるが、馬子にも衣裳の言葉通り、表紙が販売結果に結びつく可能性は高く、重視されている。これはE-Bookになってもあまり変わっていない。コンテンツ・ストアでもポスターが商品のID(顔)として定着し、市場で機能しているからだろう。

Steve-Jobs-Bio-Kindle-iPad-Galaxy-Tab-Stark-640x4276インチ前後のスレート型というシンプルな形状をとった(最も制約が大きい)第一世代のE-Readerは、表紙の扱いに苦慮し、このポスターに特別な地位を与えなかった。結果として、この判断は正しかったと言わざるを得ないが、それは冊子本における表紙の重要な機能を排除したことを意味した。クレイグ・モド氏は「スティーブ・ジョブズの伝記では表紙を表示させるのに<戻る>ボタンを15回以上押し続けなければならない…。これは残念なことだ。」(『ぼくらの時代の本』(2014))と憤慨していたが、気持ちはわかる。本と付き合う「順序が違う」「敬意が足りない」というのだ。たしかに体験上無視されてよいことではない。

フォルダブルE-Readerは初めて冊子の機能を超える

読書体験を重視するアマゾンは、印刷本の出版支援サービス(Createspace)を2005年から始めており、印刷本も出す出版社 (Amazpn Publishing)も書店 (AmazonBooks)も持っているが、それはメディア体験における溝を具体的に検証しつつ、溝の中にあるビジネスチャンスを探っていることになる。表紙付冊子本とスレート型E-Readerのあいだにあるものは、かなり多い。基本的に、前者がポスター兼ビジュアルID(出版社のメディア)であるのに対して、後者が書店と著者と読者の間にあるメディアであることだ。後者ではストアの露出は自制されている。

reliure冊子本の装丁には、紙に印刷された情報に還元出来ないものがある。それは「本」の独立性を主張する実体で、表紙裏まで使えばかなり広大な空間がある。印刷本の場合は、上製本、並製本、カバーの有無といった衣装によって価格差があるのが当然とされるほどだ。紙による個性と格差の演出は、これからも紙のクラフト・アートとして残る(オンデマンドとして)。

フォルダブルは、新しいスクリーンを提供することで、E-Readerに新しい次元を拓くもので、それはポスターで本を包むこと、本に相応な衣装を着せること以外の機能を提供する。例えば以下のような情報を選択的に表示する。読書空間のなかでの対象の位置を知る助けとなるもので、著者や出版社と読者をつなげるものだろう。

・本の背景・位相・意味に関連する情報を提供・更新する。
・本のキーコンセプトと関連する本の情報を提示する。
・本の読まれ方などに関する情報を表示する(ソーシャルリーディング)。

著者も出版社も、PODやクラフト以外のものを読者に提供すべきものだと思う。本のカスタマイズは、オンデマンドのクラフト・アートの世界として発展させていくべきだ。 (鎌田、11/27/2018)

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