B&N「退職金払え」「給料返せ」の泥沼

B&N_2018B&N問題は、買い手と金額などに移行したと考えられていた。売却の準備のために、外部法律事務所に依頼して「社外特別機関」を設置する届をSECに提出したりしたからである。しかし、これは売却を急ぐためではなかったようで、リッジオ氏は、売却よりも年末商戦よりも、追放した前CEOの「責任」を追及する損害賠償を裁判所に提訴した。

年末商戦を前に「自爆」

Riggio_vs_Parnelosパーネロス前CEOからは8月の解雇を不当として退職金請求訴訟を起こされており、今回はこれに反訴した形。理由は「善管注意義務違反」から、「職務放棄」「いじめ」「セクハラ」を含む一連の「不誠実行為」で、「退職金どころか払った給料を返せ」ということになる。前CEOが破談になったとした交渉は、もともと見込みが皆無で、時間を浪費しただけ、とのことだ。B&Nはさらに破滅への逆降下に向かっている。こういう状況では依頼人の立場になって客観的な助言をする弁護士より、追加料金で取れるだけ取る弁護士が活躍することになるのは常識だ。

書店ビジネスで最も重要な2ヵ月間を経営不在のままに置いているだけでも、リッジオ氏の「自爆」を疑わせるのに十分だろう。B&Nの崩壊は、彼が1960年代に開発した「大規模書店チェーン」というビジネスモデルの寿命であり、出版・印刷・書店という「三角形」の寿命だ。本という特殊な商品を専門に扱うシステムは、消費者との直結を可能とするインターネットによって優位を失った。それはほどんど常識化されながら、放送・新聞・映画館など大メディアが認めないために維持されている。いわば「現実歪曲空間」である。

RDF2これはスティーブ・ジョブズの特殊な才能を「現実歪曲空間 (RDF)」と表現した言葉だが、才能がなくてもメディアにはその力がある。RDFにより、「実現困難性に関係する規模感や距離感を歪ませ、いま手元にある作業が容易に実行可能な気になる」ものだ。一つの時代を築いたリッジオ氏にもRDF能力は備わっていた。数年前までは。

RDFは危険である。現実に多くの人々の生活や資産を危険にさらし、出版と書店という文化システムを機能不全に陥らせている。それは現実を「フェイク」と錯覚させる。社会を巻き込むメディアの統合失調症であるだけに影響が大きい。 (鎌田、11/01/2018)

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