E-Book価格戦争小史(1):10年戦争

出版社が書店と協力して知恵を絞り、読者を開拓するという光景は久しく見ないものだった。これほど待望されたものはない。これが「休戦」ではなく「和解」であることを期待しつつ、これまでの「10戦戦争」を振返ってみたい。それは出版ビジネスが版をめぐって展開する者から別のものに変ったことを示していた。

すべては「価格」から始まった

伝統的なビジネスにおいて本の価格決定は最も重要なことの一つだ。本という商品は、どのくらい売れるか(購入者、数量、期間…)、幾らで売れるかが最も難しいものに属する。印刷本では原価は数量に反比例するから、うまくいけば利益を出すし、外れれば赤字となる。米国の「大出版社」と「大規模書店」は、不確定要素を減らし、最大のROIを出すモデルをそれぞれ開発してきた。メーカーと流通の戦いはどの業界でも似ているようですべて違うのは、商品や消費が異なるからだ。本はやはり特別だった。

アマゾンが「本」からビジネスを始めたのは、商品、消費者が最も離散的(バラバラ)であることに注目したからと言われている。常識的には最も儲からないし、規模を大きくできない商品だが、Webで「世界」は変わると判断したのだ。価格差を武器に薄利多売することで顧客・販売機会を拡大する持続的成長モデルを成功させたのだが、出版界は何よりも「低価格」と「販売力」を危惧した。そしてKindle (2007)については「新刊・ベストセラー10ドル」という基準を発表し、初のダウンロードE-Bookを成功させ、急成長を5年も続けた時には、懸念は恐怖に変った。アマゾン(書店)が出版を支配する!

これは同時にあまりにも奥のことを意味すると考えられた。(1) 紙の本が消える、(2) 価格が統制される、(3) 街から書店が消える、(4) 出版社が消える…といったことだ。Kindleから5年目の2012年、ビッグ・ファイブは、歴史的な「E-Book価格戦争」を発動し、iPadのアップルを巻き込んで価格水準を押上げることに成功した。しかしこれは連邦から州までの独禁当局に摘発され、完全敗北した(2012)。本のコスト構造から販売マージンまでが法廷に提出され、消費者に弁済されるべき額までが算定されたのは、もちろん初めてのことだ。

デジタルは新しいゲームの始まりだった

しかし、これで終わりとはならなかった。大出版社はそれぞれアマゾンとの個別交渉によって「E-Book委託販売制」を貫徹することに成功した。念願の「価格決定権」である。ストアには3割の定額手数料が支払われる。ちなみに、アマゾンはKDP Selectにも「7割版権料」を導入し、出版社とインディーズを平等に扱うことを表明した。つまり、著者も3割手数料で販売できることとしたのだ。アマゾンは巧妙に読者と著者の両方を得た。つまり自動的に出版兼書店となったのである。

価格水準を押上げることには成功したが、本誌の予想通り、成長は抑制され、デジタル比率は抑制されたが、E-Bookは見えないところで(KDP)で市場を拡大し、アマゾンの価格戦略は印刷本で威力を発揮し、かつては出版社を苦しめたほどの大書店チェーンは、デジタルを放棄した代償(時代遅れのビジネスモデルのコスト)に苦しんだ。ビッグ・ファイブはB&Nには同情しなかったが、自分たちの本を効率よく売ってくれるのがアマゾンだけになったことに愕然とせずにはいなかった。

価格戦争の教訓。もはや出版における価格の意味は変わったということだ。では何が変わったのか。 (鎌田、12/27/2018)

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