米国で書店卸2社が合併を模索

日本でも「取次制度の崩壊」(あるいは「独禁法の適用除外」的現実の終焉)が現実的問題として語られるようになってきたが、そうしたものがない米国でも、流通再編の動きが始まったようだ。二大卸企業のイングラム社は先月、ベーカー&テイラー社(B&T)の卸部門買収の可否について公正取引委員会 (FTC)に要請(「軽い予備的検討の依頼」)を行った。

イングラムとB&Tの書籍卸部門が合併打診

FTCはすでに独立系書店、出版社、アマゾン、大手出版社の関係者からの聴取を開始したようで、Publishers Weeklyのジム・ミリオット氏の記事 (12/07)によれば、詳細は不明だが、認められればかつての書籍流通の一角が崩れる(選択肢が減る)ことになるので、業界に少なからぬ不安が広がっているという。

創業180年以上の書籍卸企業であるB&T(ノース・カロライナ州シャーロット)は、主として図書館や法人・官公庁向けの卸で知られているが、紙とデジタルの卸については2016年4月に同業の老舗フォレット社(イリノイ州ウエストチェスター)に買収されている。フォレットは教科書流通のヴァロア社 (Valore)も買収しており、イングラムと同様にM&Aによる生残りと拡大を考えている。ターゲットは、未開拓と考えられている国際展開で、B&TはGlobal Publishers Services (GPS)を立ち上げた。責任者がインド系のチトラ・ボパルディカル氏であることからしても、インドと教育がフォーカスであると思われる。

小売の寡占化がさらに進むか

B&Tは図書館のシェアが相当あるので、フォレットの基幹事業(テクノロジー・サービス、K-12 教材配給)ともマッチする。他方でイングラムの中心は基本的に商業出版で、独立系書店については最大シェアを有している。イングラムがB&Tの卸部門を取得すれば、唯一のナショナルチェーンとして圧倒的な力を持つが、それは書店団体(ABA)が歓迎しない。ABAのオーレン・タイチャー会長は、1社独占への懸念を当局や議会に強く働きかけるという。独立系書店の団体IBPAも同様で、「イングラムともB&Tとも良い関係でやってきた。このままでいってほしい。」とのことだ。しかし、最近の傾向として、行政や立法府には合併反対論は強くないので、最終的には承認される可能性が高いともみられる。書店流通が一社独占に近くなると、小売におけるB&Nの立場はさらに弱まるかもしれない。

印刷本の流通は、オンライン(アマゾン)と書店(イングラム+B&T)に分かれる方向になりそうだが、その先は予想しにくい。当事者は必要がない限りコメントしないものなので、オープンな問題提起と議論に期待したい。 (鎌田、12/13/2018)

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