E-Book価格戦争小史(3):ビジネスモデル

E-Bookの商業化(物理的な「版+紙」に依らない出版)は、DTPの登場からおよそ20年をかけて、実現されてきたものである。「電子出版」「電子書籍」は様々な形で言われながら、ビジネスとして成立するためには、つねに何かが欠けていた。鶏と卵(循環参照)の関係にある「本・出版・読者」がデジタル環境で「自立・分散・協調」することが必要だったのだ。

出版社の計算と誤算:紙の長城

最初に紙があり、版があった。それらがない世界は誰も知らない。欧米の出版社は、版のデジタル化を進めてきたが、これは印刷本における生産性を追求し、将来の利用機会に備えて管理を徹底するためだった。

その過程で「コンテンツ」という発想が生まれたとしても、印刷以外の用途であったとは思えない。しかし、出版社は肝心なことを忘れていた。著者と読者がどのように「デジタル」に関わるのか、そして「出版・印刷・書店」以外の第三者が関与する可能性と、その場合の新しい関係だ。

版(あるいは物理的メディア)の優位は、活字・写植・CTSを経て生き延びたが、印刷された紙(冊子本)が主要流通手段でなくなれば、本も書店も意味を失う。「ミレニアム」前後10年の「デジタル・ブーム」は、あらゆる予想も超えるほどのものだった。それまでデジタルは、メディア・ビジネスの資本設備の問題だったのだが、<Web・モバイル・ガジェット>は、B2BとB2Cの境界を崩した。音楽ビジネスで起きた在来流通(CDショップ)の崩壊は、出版における最悪の事態を予想させた。

とはいえ、経験者ならお分かりのように、用途によって編集と制作が複雑に絡む本づくりは、ルール化に不向きで、実装(自動化)など遠い先、と考えただけで手を出す人も少なかった。音楽と文字は違う。

Web対:版の「最終最強の城壁」

メディアも当然、歴史が古い出版業におけるデジタルの波に注目し、Webビジネスに対して在来書店や出版社がどう対応するかに注目した。対決の主役は、ガジェット vs. 書店となると思われた。焦点は、ガジェットの普及と紙とデジタルの力関係。

しかし、出版社は(上述した)肝心なことを見落としていた。著者と読者である。逆にアマゾンはこの両者を最も重視していた。Web環境では、この両者を誰かが結びつけるだけで、「出版の三角形」を構成するからだ。出版社は、デジタルの脅威に対してコンテンツの支配強化で対応しようとする。合言葉は「コンテンツは王様」だった。

Kindleプロジェクトに着手した2004年当時、アマゾンは印刷本の販売を10年近く続けており、本屋としてのパフォーマンスを高めていた。そしてCreatespace (2005-2018)で印刷本の制作支援サービスを立上げ、「本・出版・読者」のサイクルを構成した。これは人手のかかる印刷本制作と自動化の可能なE-Bookオーサリングのプロセスを連携可能にするためで、KDP Printとして最終的に完成したのは2018年である。いわば、出版制作の城壁の下に、13年あまりの時間をかけてトンネルを通したものと考えられる。これだけは時間が必要だった。 (鎌田、01/15/2019)

 

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