2019年の10大予想 (1):予想の終焉?

数年前から、米国でも出版の「10大予想」的記事は激減しており、それらを下敷きにコメントしてきた本誌も頭を悩ませていた。理由を説明するのは簡単ではないからだ。唯一発見したのがWritten Word Media (WWM)のリッチ・ウルマンCEOの予想である。とても考えさせられ、参考になったので、ご紹介しておきたい。

WWMウルマン氏の予測

WWMの10大予測は、これまで行ってきた「2018予想」および「2017予想」を、読者とともに議論して得た予想をもとに読者投票を行い、さらに業界のリーダーのコメントを加味して、最終的に独自の「著者が知っておくべき2019年の出版動向」として整理したとされている。つまりブログ的なものではなく、一種のデルファイ法のようなシンクタンク的なやり方だが、悪くない。成長著しいインディーズ・コミュニティの経験と考えを反映したものと思われる。

  1. Amazon Marketing Service (AMS)広告がインディーズ出版の基本アイテムになる。
  2. 本の品質が重要な成功要因となる
  3. インディーズ著者の「専業化」が進む
  4. 「(Kindle)集中か、複数分散か」論争が継続
  5. オーディオブックが引続き、在来出版社の陽の当たる場所に。
  6. インディーズ作家がオーディオブックで成功する
  7. 早く、頻繁に出版する作家ほど成功する
  8. 定額サービスは安定成長を続ける
  9. 「オーディエンス」が注目されたことで「ニッチ」志向が進む
  10. 新技術、新サービスが(いつものことで)喧伝される

「もう一つの世界」

以上の通りだが、基本的に「出版コミュニティ」の関心にフォーカスしており、伝統的な出版社と書店で構成される「業界人向け」予想とはまるで違う。(1)のAMS広告は、本誌もまだ(恥ずかしながら)紹介していない、アマゾンの"著者向け"新サービスだ。それも含めて「インディーズ」が新しい職業作家となるか、新しい出版ビジネス(出版プロデューサー)かに関心が集まっており、基本的にKindleのエコシステムの中で世界が回っているようだ。これは無理もない話で、ビッグ・ファイブのベストセラーなどは外の世界ということだろう。

「伝統的」世界はすでに予想を止めた(現実が進んでいるからだ)。B&Nの運命やアマゾンの新しいサービスなどは考えたくないのだろう。「ブロックチェーン」なども去年で話題から消えてしまった。それに対して、WWMの予想する世界には、著者や編集者の生活がある。前者は虚構の将来、後者は進行中の現実だ。本誌は出版界の分裂を語ってきたが、今年から新しい世界の紹介に力を入れていこうと思う。 (鎌田、01/17/2019)

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