アメリカの「大凸」が年内に合併!

2018年の米国出版界では、目立ったM&Aが出版社にはあまり無く、逆に流通と印刷での大型案件が相次いだ。イングラムとB&Tの話は長くなりそうだが、関係者はそれほど多くない。一方で、出版印刷トップの2社の合併は今年半ばにも決着しそうだ。しかし、こちらはメディア全体への影響が大きいとみられる。印刷ビジネスモデルの再構築の過程にあるものだからだ。

クァッド・グラフィックス→LSC(旧ドネリー出版部門)

Quad/Graphicsが、LSC Communications(シカゴ)を14億ドルで買収する提案を行ったことが発表されたのは10月31日。合併すると売上80億ドルになるが、これは衰退市場での典型的合併では必ずしもない。"Quad 3.0" という戦略をすでに発表し、市場での評価が高いためで、LSCはデータ/メディア系に強く、まさに戦略的買収として期待されるケースだからだ。

LSC社は、2016年に名門印刷会社のR.R.ドネリー社 (R.R. Donnelley & Sons Company)からスピン・オフして誕生した。メディア系では、古典文学シリーズで知られるDover Booksや受験教材のResearch & Education Associationを保有している。2017-8年にはハーヴァード、MIT、イェールの名門大学出版社を保有するTriLiteral LLCを買収し、印刷会社も傘下に持つ。これも戦略的な再編として誕生している(従業員2万4,000人)。クァッド社は1971年の創業で、欧州と中南米に展開しており、2010年にはWorld Color Pressを買収、Transcontinentalと設備の交換を行い、広告・マーケティング系のVertis Holdings, Inc. を買収していた。

印刷ビジネスモデルの再構築

印刷ビジネスは大規模で長期にわたる再編の渦中にある。もはや「受注型製造業」といって構えていられる時代ではなく、データとサービスのバリューチェーンに沿って「印刷/出版/メディア」を必要とする全分野」に展開し、発注者と読者を結ぶビジネスモデルを固める段階に入っていると思われる。Quad 3.0 Transformationはその代表的なモデルと言えるかもしれない。基本的には、基幹となる印刷の持続的成長(1.0)の上に、周辺の業態を買収してサービスの拡張と効率を高める(2.0)が位置づけられており、書籍はここに入る。3.0はマルチチャネル・トランスフォーメーションにより高い付加価値を提供する統合的なマーケティング・プラットフォームとされている。

極論すれば、シェアを争うライバルや、売掛が溜まったり、しつこく値下げを迫る「得意先」を買収してスッキリ…ともいえるが、そういうのは戦略ではなく、印刷が直面している状況は文明史的な転換期のものであることはこの産業の関係者は認識している。 (鎌田、01/03/2018)

 

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