没落する紙、付き合うデジタル:平成30年の出版

出版科学研究所は1月25日、『出版月報』1月号で2018年(1~12月期累計)の出版市場規模を発表した。紙(書籍・雑誌計)は5.7%減の1兆2,921億円。デジタル市場は前年比11.9%増の2,479億円。全体で1兆5,400億円で、デジタルが紙の減少幅を緩和したことになる。デジタル比率は16%で前年から2ポイントあまり増えた。

価格の流動化が20年の低落基調に変化を生む

注目点のみコメントするが、紙市場は、雑誌の下げ幅が10%あまりと危険なレベル、書籍が2.3%減の6,991億円とで、文芸、実用、文庫、新書など主要ジャンルがマイナスなのでこれも安心できない。電書(文字もの)が同10.7%増の321億円だが、タイトル、価格ともに魅力は乏しく、1割増はあまり評価できるものではない。電子雑誌が1割近い減少で200億円を切った。読み放題サービス「dマガジン」の購読者減少が影響したと考えられている。雑誌本体が不振なのに「電子雑誌」が好調というのは限界がある。

紙市場は書店とアマゾンに支えられている。書店は減少を続け、アマゾンは出版社と直取引を進め、卸取引(買切り)を拡大しつつあることは周知の通りだ。今後は、書店も含めて価格が「柔軟化」することになるが、それが電書市場拡大の好機になると思われる。バブル崩壊以降の出版は、書店が減少し、販売機会も縮小して採算性も悪化するという最悪の時期を経験してきた。出版・印刷・取次・書店の4業界は、それぞれインターネット(Web)という新しい文明と、勝ち目のない戦いを続けてきたことになる。ここまで続いたのは、600年続いた「活字と紙」に代わる確かなものが見当たらないためだろう。

ゲーム・チェンジ

しかし、出版は希少な資源を扱う「専門4業界」をセットで必要とするものではなくなった。著者と読者が直接結びつくことが出来るWeb世界では。コンテンツの取扱いに事実上制限はなく、そのことによって、「著者」と「読者」を見つけることが容易になった。出版という人間と社会に根付いた文化システムはなくならないが、伝統的な「出版業界」を中心としたゲームのルールが変わったのだ。

Web上の新しいゲームは「著者」と「読者」を中心に展開する。価値は、その両者のコミュニケーション(対話プロセス)から生まれる。20世紀の末に生まれた新しいゲームは、ひと世代を待たずに姿を現した。新しいゲームの本質をいちはやく理解したアマゾンは、本という無限に多様な商品と市場を、薄利多売の旧式メディアから最先端の付加価値コミュニケーション産業に変えた。新しいビジネスとプロセスにおいては、紙、デジタル、オーディオなど、読者が評価するあらゆるものが相応の価値をもつ。

アマゾンは現在新しいルールとグラウンドで無敵だが、出版業界がいつまでも適応できないとは考えられない。版の栄光を捨てて「著者」と「読者」の信頼と支持を取り戻せばよいのだ。 (鎌田、02/07/2019)

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