ピアソンが米国教科書事業から撤退

英国に本社を置く世界最大の総合教育出版社ピアソン社は2月18日、米国のK-12(高校までの無償教育)教科書部門を投資ファンドNexus Capital Managementに2.5億ドルで売却すると発表した。教科書電子化を反映した決定となる。同社は、「シンプルに、効率よく、そしてより大きな成長機会に取組む」と述べている。

印刷教科書から「教育付加価値」へ

ピアソン社の同部門は、1,330名を雇用し、総資産6億4,800万ポンド、純資産7,500万ポンド。昨年は、売上3億6億4,800万ポンド、利益2,000万ポンドを得ていたが、おそらく赤字は目前だったと思われる。そうなると価格は急速に落ちていく。NCMファンドは最終販売先を探すまでの繋ぎで、売却も(現金や債券ではなく)ベンダー・ノートという売約書による。初回の10%だけが現金で、残りは3-7年以内の分割という細かいものだ。付帯条項は相当に長いものになるだろう。長い間安定収入を保証してきたK-12教科書が、こうも買い手が簡単に見つからなくなっていることに驚かされる。撤退も容易ではなく、まるで不良債権処理ではないか。

ともかくピアソンは最大市場の問題事業から撤退することに成功した。同社はグローバル事業、ITサービスに特に力を入れている。「コンテンツ+サービス」基盤は、国別、セグメント別に分散した体制ではロスが多く、中国とインドという成長市場に機敏に対応できない。新しいオペレーションの再構築は10年がかりで進められているが、それでも道なかばでしかない。

教育ニーズの変化、グローバル化へ対応

ジョン・ファロンCEOは、バーチャル・スクール、学習達成度管理システム(LMS)、アドバンスト・プレイスメント (AP)などの国際的履修プログラム、技術キャリアなどへの対応をテーマとして挙げている。こうした教育の付加価値を高めるビジネスは、行政や教育者への対応という静的で安定した教科書出版とはあまりにスピード感や競争環境が違う。紙をベースにした後者のビジネス基盤は成長余地がなく、維持コストが嵩む。そちらの世界は、ライフサイクル教育のエントリ・システムとして位置付けるとともに、APのような付加価値ビジネスのテクノロジーやサービスの学校へのマイグレーションで安定的に稼ぐ、といった位置づけになるだろう。

「教科書」が単独の事業であった時代は「版」とともに終わり、「教育出版社」はステークホルダー(本人、各種教育機関、行政・企業等)にとってのサービス付加価値を提供していくものと変貌を始めている。教育は出版の世界での柱であったが、ここはWebで始まった変化(出版・知識革命)の前線となるだろう。グーテンベルク革命が16-7世紀の知識革命をリードしたことが想起される。もしこの動きに商業出版社が追い付けないようであれば、結果はいうまでもない。 (鎌田、02/26/2019)

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