E-Readerの新しいフロンティア(1)

E-Readerという製品分野は、もちろん読書専用に開発されたものだが、大方の予想を外れて、タブレットと競合せず、KindleやKoboのようなストア・プラットフォームとは無関係に複数の製品が存在し、成長し続けた。ガジェット性は乏しかったが「ニッチ」を形成したのは理由がある。それは大きな可能性だ。

E-Readerの誕生とニッチの秘密

E-Readerは、いまから20年以上も前の1997年に生まれた 'Rocketbook' を嚆矢とする。当時は Palm PilotとBlackberry、日本ではシャープのZaurusといったPDAが全盛だった。これらはすべて携帯、そしてスマートフォンに吸収された。忙しい多機能を売りにしていたからだ。メディアタブレットも同じく「多機能」と「動画」という読書向きでない方向へ発展した。

しかし「読書」が吸収されることはなかった。時間に追われる生活になじんでいる人だけが、PDAで読みたいと思ったのだろう。「読書」に集中したい人は、何事にも煩わされたくない。必ずしも「内容に集中」だけでなく、想像・思索の空間(余裕)ということもある。装幀本の素晴らしいところは、そうした創造的な「空白=空間」がタイトル毎に用意されていることだと思う。文庫や新書にはそれがない(ので安い)。

本を読む「道具のかたち」は、古代から中世にかけて生まれた冊子写本 (codex)に由来する。これは巻物に替わったものだが、それによって保管性・保存性・管理性が格段に向上した。E-Bookのデザインもコデックスを継承し、四六判ハードカバーのような体裁をとっているのはそのためだ。E-Readerの発展は「電子コデックス」という価値だ。

「余白」という余裕

ドイツのレクラム社 Universal-Bibliothek (1867-)や英国Penguinペーパーバックの (1937-)のシンプルなデザインは、用紙や印刷機、書棚の効率までを考慮したものだが、根本は「廉価=普及」である(創業者のA.P.レクラムは貸本業者だった)。当時の読書家には「粗悪」と蔑まれたものだが、移動(通勤や旅行)が普通の時代、あるいはそうした人々/ライフスタイルに合っていた。室内=読書時間の減少に対応したとも言える。

マーティン・エバーハードとマーク・タプニングの「発明」によるRocketbookは、LCD画面で片手操作可能な500gあまりの「携帯書籍専用端末」は初年で2万台を売り、アマゾンやB&Nの関心を惹きながら、数年で消滅した。Webとの接続がなかったためだ。しかし、重要なことは「Rocketbook」の専用性が、20年を経たその後のE-Readerに維持されていることだ。これは「本」と「読書」というものを理解する上で重要な示唆を与えると思う。文庫本の普遍性にも通じる、E-Readerのミニマリズムである。筆者は「文字・活字」デザインとともに「余白」を重視したい。そこには大きな可能性があるからだ。  (鎌田、2/28/2019)

Send to Kindle

Speak Your Mind

*

Scroll Up