大出版社とアマゾンの「微温的状態」

米国の印刷本販売で優に5割を超すアマゾンは、意外なことに数年にわたって大手出版社に利益をもたらしている。しかし、アマゾンはデジタルでも出版でも、手を緩めていない。これはどういう状態なのか。確かなことは、大出版社は歓迎し、アマゾンは自分のゲームを続けており、その結果は間もなく誰の目にも見えてくるということだ。[全文=会員、期間限定公開=4/11まで]

アマゾンは大出版社を圧迫せず

「アマゾンはシェアを上げ、大出版社は利益を上げる」と出版アナリストのマイク・シャツキン氏は最近のブログで書いている。書籍市場が「停滞」する中で、コストを圧縮している出版社が利益率を高めるという傾向が何年も続いているということだ。これは互いの「価値」を尊重している可能性が強い。大出版社にとっては、アマゾンが「最上得意」となった。大出版社と大書店には、取引条件と販売価格をめぐって一定の緊張関係があるものだが、そうした雰囲気が伝わらず、出版社が利益を伸ばしているのは、アマゾンの「協力」があると考えるべきなのだろう。大出版社はアマゾンとの間で個別の秘密契約を交わしており、うかがい知れないが、悪くはないと見られている。

大出版社が以前脅威に感じていたのは、「アマゾン出版」や自主出版が有名作家を引き抜くことだったが、アマゾンはそうした「戦略的資源」を重視する素振りを見せず、彼らとの関係は安定している。海外輸出やオーディオブックが好調なのも、それが大きい。

流通問題もアマゾンが「解決」

もう一つの要素は、既刊本の販売について頭を悩ますことがなくなったことだ。E-Book以前には、発刊後数ヵ月で店頭から姿を消す本への対応は問題だったが、オンライン販売が半数を占め、印刷・配本も迅速になったために、それらも販売機会となった。アマゾンの KDP Printとイングラム社の Lightning Source というPoDサービスは、在庫本を転送するより早く配本できる。唯一の懸念材料は、B&Nの衰退に歯止めがかからないことだが、これすらも出版社にはコスト削減の好材料になっているというのだ。もはや出版社は消費者ほどは B&Nを惜しんでいない。

2011年に、ボーダーズ (Borders)社 (511店舗)が倒産した時には、B&Nや近隣の書店の来店に影響があった。今回そうした情報がないのは、B&Nがすでに出版市場から存在を消しつつある以外に考えられない。全米の印刷本市場における数パーセントのロスは、アマゾンのオンラインで埋められたということなのだろう。ともかく、2016年からの3年の在来出版界は、「B&Nの一人負け、出版社の一人勝ち」ということだった。アマゾンがこの3年間に、出版社を「ふとらせ」ることでシェアをさらに高めたことは計算通り。注目は、次にどういう手を打ってくるかだ。

シャツキン氏はアマゾンの狙いが、(1) 大出版社との取引条件の更新、(2) 次のベストセラーを狙える有望ライターとの契約の確保、であると見ている。市場での独占的地位を背景にした交渉は、昨今の「反独占的世論」のせいで慎重さが必要となるが、後者であれば市場に支持されるだろう。自然に考えてアマゾンがデジタル(KDP)や出版で強力なイニシアティブを開始すると思われる。それはグローバルなものだろう。 (鎌田、03/29/2019)

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