Web30年と「本・著者・読者」(1)

この3月12日は、ティム・バーナーズ=リーが1989年、欧州原子核研究機構 (CERN) で「情報管理システムの提案」を提出してから30年となった。これがWebにつながる話は、長いようで短いが、Webは満30歳を迎えたことになる。世に出たのは1995年で、わずかの間に世界がこれほど変わるものか、というのが多くの人の実感だろう。

Webは「世界本」としてつくられた

筆者もこの1年あまり、あらためて「Webとは何だっか?」を考えて苦悶した。Webと本がどんな関係にあり、本をどう変えてきたかを考えて手懸りがつかめなかったからだ。ITの世界に25年以上いて、Web由来の技術はよくなじんでいたしエンジニアともよく話をした。本のデジタル化の動向も追っていたが、「結局のところ」材料に呑まれてよくわからなくなったのだ。

Webは、「計算機」「通信」の技術とは異質で、それらより上位にある。そこで逆に考えることにした。

Webはなぜ本から生まれたのか、なぜ今も、本と結びつき、そこからアマゾンという21世紀最大級のビジネスモデルを生んだのかと考えたのだ。Webは、人と人のコミュニケーションの発展として、本をモデルとし、本と本のつながりから「世界」を構想した。HTML/XMLという最もシンプルな言語が、だからこそ、コンピュータ・システムからヒト、モノ、自然まで、最も複雑なものをつないだということだ。何よりも、社会の最小単位である人間をつないだことが大きかった。これがバーナーズ=リーの最大の発明(発見)として称えられることになるものだろう。

Webは、デジタル・ネットワークを通じた「本」と「コンピュータ」の融合である、ということはCERNを調べ直し、バーナーズ=リーが参考にしたヴィクトリア朝時代の "Enquire .. Everything"(生活便利帳)の持つ「世界性」を考えてわかった。その上で、ハイパーテキストの元祖であるヴァネヴァー・ブッシュのMemexの思想に影響を与えたホルヘ・ルイス・ボルヘスの「世界図書館」や、さらにその背景にある「20世紀ショック」とIBMの創業者の理念にもなった「Think」までが一連のものとして浮かんできた。

「著者/読者」は、「世界/人間」を表現する

Webは、20世紀の知恵の結晶である。それは「本=テキスト」を読み、共有することに始まり、あらゆる角度からものごとを考えるためのものだ。それは著者/読者という、人間の2つの側面の相互作用で生まれる。「本」をめぐる環境(記録・再生・更新)であり、本から図書館、チラシから百科事典までのすべての「文書」を包含する。ジェフ・ベゾスはそこに注目した。Webが現実化する1994年に彼が考えたものは、「本=世界書店」という "Everything Store" の永久機関であったはずだ。これは1年前に前著『Web時代の出版とKindleの10大発明』を書く際に筆者の頭に浮かび、それを実証するためにアマゾンのブックビジネスの仕組みを解明した。しかし、それだけでは足らず、過去500年以上本の世界を動かしてきた<出版・取次・書店>というシステムではなく、あらたに「本・著者・読者」という原理が、現実の出版を動かすことを証明しなければならない。

来週刊行の『Web時代の本・著者・読者』(Kindle以後10年 Book2-1)は、Webがいかに(モノではなく「本・著者・読者」をめぐる生きた活動としての)本と出版を蘇らせたかを述べたい。著者/読者は、生きた生活者として世界/人間を表現する。Webはそのようにつくられており、本の歴史の全体はそのことを語っている。出版は「版」ではなく、「本=人間」のためのビジネスである。アマゾンは、Webにその現実性を発見し、そのためのシステムを設計し、ビジネスとして動かし拡大している。他方で「版」のビジネスは衰弱している。もはや「紙かデジタルか」の時代ではない。 (鎌田、03/15/2019)

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