Webと「本・著者・読者」(3) :本の「不滅」

Googleの「スキャン・プロジェクト」が出版界に与えた衝撃のことは、前著『Web時代のブックビジネス』でも書いたが、結果として出版に少なからぬ(誰にとっても予期せぬ)影響をもたらした。それは「絶版本」は誰のものか、から「絶版」がなくなった市場で「本」をどう売ったらよいのかまで及び、「自主出版」とともに在来出版を苦しめているが、これらは互いに関連しあっている。

生まれ、残り、消え、復活する本…

本という商品が「特殊」なのは、それがふつうに「費消」されないことにある。残るものとして丁寧につくられ、その通りに「残って」しまうことが多いからだが、それらは、商業流通・居住空間を圧迫するほど、なかなか消滅しない。紙の出版は、それぞれ、あるいは業界として問題をコントロールする方法を持ってきたが、複写を本質とするデジタルは、版=紙のサイクルの支配を不可能にした。この社会的問題を解決する仕組みを、業界はゼロから再構築できなかった。

出版業界の対応は、問題を「局限し」「個別化」し、もっぱら「紙の上」で解決することだったが、あまりよい対応ではなかった。アマゾンがこれを予想して待ち構えていたからだ。そのために、すべての既刊本を活性化するオンライン市場を構築し、次にE-Bookを、それと同時に自主出版市場をゼロから設計したことは、非常に精密な計算が行われていたことを示している。

簡単に言えば、本のライフサイクル(新刊、既刊、絶版、復刊)を市場に対して最適化することだが、これはフォーマット(紙、E-Book、声)、チャネル(オンライン/書店、販売/共有)におけるユーザーの最大の選択肢を意味する。これが伝統的な紙のビジネスにとって「破壊的」なのは、著者・読者にとってE-Bookが「消え」ないことによる。本が消えるのは、在庫が無くなった時ではなく、権利者が発行を停止した時だ。メモリの価格がゼロに近づき続ける限り、著者・版権者には出版した本を消す理由はなく、消すのは「読者」を望まない時だけだ。

新刊以後の本の出版価値

紙の本は、版を保有・販売した者に相当の利益をもたらした。ジェーン・オースティンでも、小林多喜二でも、出版社は、リスクの大きな新刊ではなく、古い果樹から収穫することが出来た。市場のニーズを発見し、喚起し、販売する書店のネットワークがあったからだ。もうこの市場は出版社の独占ではない。

アマゾンがWebとともに「世界最大の書店」をスタートさせたのは、デジタルによる出版の歴史の「摘まみ食い」などではなかった。むしろこの「不滅の遺産」から永久に収穫する「社会的仕組み」を構築し、保有しようと考えたのだ。そんなことが出来るだろうか。結果的に、それは可能だった。しかし、収穫するのがユーザーの体験で、現金でないならば。本のライフサイクル・サービスが、最大のネットワーク価値、最大のユーザー体験(価値)と結びつくためであることは、すでに述べた。それはKindle以前に半ば完成していた。KindleはE-Bookを売るためという以上に、デジタル/Web上での「本のライフサイクル」の再構築であった。そこにはあらゆる形の「出版」と「再版」が不可分のものとして組込まれていたのだ。ここでは「新刊」に比べて忘れられがちな既刊本~絶版本について考えてみたい。 (鎌田、01/10/2019)

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