21世紀の物語り:(1)オンライン・ストーリー現象

[EB2 Magazineマンスリー5月号: 公開記事]◇

4月の「話題」は、「ケータイ小説の復活」を目指すLINEノベルを取上げた記事となった。この伏線としては、Wattpadのアジア拡大があり、その背景にはWeb世界での「ストーリー」の拡大という「大テーマ」がある。そもそもWebで「ストーリー」を語ると、必ず別の大きな「ストーリー」の一部となってしまう。

ストーリー現象とは何か

Webというメディアは、完結性より連続性を好み、読者が連続性を発見することで、メディアの枠を超えていくらでも続くのだが、それは同時に、タイトルの完結性を前提に「傑作」「決定版」を売ってきた出版ビジネスにとっては難題でもある。Webを取るか印刷本をとるかという問題に出版社が迫られるからだ。

「ケータイ小説」は、人気が出て映像化された作品もあるが、国民的な「作家」や記憶に残る「人物像」も「作品」も生むことがなく、特定の時期、世代の中から出ることもなくしぼんでしまった。これは少々「哀しい物語」だったと思う。Wattpadをホーム・グラウンドとするアン・トッドが、Simon & Shuster社からメージャー・デビューを果たしたような現象は、日本では起きなかった。同じくファンフィクション出身で空前の世界的ベストセラーとなったE・L・ジェイムズ (ELJ)の『フィフティ・シェイズ』三部作も、もちろんJ・K・ローリング (JKR)の『ハリー・ポッター』の気配もない。

オンラインで復活した「ストーリー」

しかし、彼女たちの作品は、紛れもなくオンラインあるいはWeb上で生まれた現象だ。JKRとELJはかろうじて大出版社からデビューしたが、それ以前なら考えられなかったとされた。JKRは「ジャンル的」に難しく、ELJは「きわどい」ものだったからだ。そしてARTは「おとな」扱いされなかった。彼らは編集者や批評家の支持を受けたとは言えないが、SNSで「シェア」されたことで「社会現象」となった。幸か不幸か、「ケータイ小説」は「無名」の現象に終わった。大人がシェアしなかったからだ。

Wattpadは、かなり周到に「ケータイ小説」の「挫折」やELJの成功から学んでいたことは間違いない。それは北米で成功し、フィリピンを起点に、アジアで次の波を起こしつつある。改めてWattpadの戦略を検討してみよう。 (鎌田、05/02/2019)

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