B&Nの救世主に英国WSのドーント氏

先週末からの米英の主要経済メディアは、Barnes and Noble (B&N)が大手ヘッジファンド Elliott Management Corp. に最高値で買収されることを伝えた。金額は6億8,300万ドル。EMSは英国のWaterstones書店の最大手株主でもあることから、英国Daunt Books 創業者でWSの経営を再建したことで知られるCEOジェームズ・ドーント氏が経営を引継ぐことが期待されている。

米英出版界の期待の星

EMSへの売却はB&Nの取締役会、最大株主のレナード・リッジオ氏の承認も得ており、同氏は54年にわたるB&Nでの日々を終えてドーント氏に引き継ぐことを表明している。大規模チェーンのウォーターストーンズ(現在293店舗)を再生させたドーント氏への期待は大きく、出版業界やメディアも「21世紀の書店」としてハイライトするだろう。ドーント氏は英米両国で崩壊しかけている巨大書店チェーンの再建に挑戦することになる。6年にわたる漂流はついに終わった。これは誰にとっても良いニュースだ。

しかし、課題は大きい。オンラインとデジタルの脅威のもとで、そして変貌する都市文化にあって「大型書店の価値」は、どのように維持されるだろうか。ドーント氏は大型書店を批判し、自らロンドンで創業したドーント書店は、地域にフォーカスした魅力的で快適な店舗デザインで人気を集めた。ウォーターストーンズでは、(米国式の)出版社へのスペース販売を止めて書店の独自仕入れを強化して業績を改善させた。しかし、同じ方法を米国で適用するのは簡単ではない。

印刷本流通の「構造バブル」の清算という課題

出版における「チェーン」の歴史的意味は、全国規模でマスマーケットが成長する第2次大戦後の時代に、書店の規模拡大が可能になったことにある。それを実現するには、(1) 独自のマーケティング、(2) ロジスティクスと商品管理、(3) 出版社との価格交渉力強化が必要だった。レン・リッジオ氏は1960年代後半に「チェーンストア戦略」を推進して、それまでの書店の風景を一変させた。1970-80年代に急速に進んだ出版社のM&Aと、グローバルなメディア・コングロマリットへの吸収は、チェーンストアへの対抗である。

しかし、それによって出版界に「バブル」が生まれたことは表面化しなかった。ベストセラー本の大規模量販を可能とするために、卸販売と小売の間で「返本保証分」が生まれ、それが雪だるま式に拡大することは、日本の取次の場合でも米国の場合でも同じである。市場の拡大とその販売の不確定性によって書店の過大な流通在庫が背景にあり、20世紀末には出版社も書店も、見かけの数字に対して「現金」が不足する常態を経験する状態に陥った。リチャード・カーチス氏が「バックリスト」ビジネスのE-Readsを創業(のちにOpen Roadに吸収)したのは、出版界の構造的歪みがWebによって持続不可能なまでになると判断したためであった。

バブル問題は、アマゾンの登場と拡大によって問題の性質を変えたが、伝統あるB&Tと、チェーンストアの革命児、レン・リッジオのB&Nを市場から退場させた。オンラインと印刷本問題への解決は、やはり書店から提起されなければならない。 (鎌田、06/10/2019)

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