E-InkがPlastic Logicに投資する理由

Plastic Logicの電気泳動方式電子ペーパー技術については本誌創刊以来、何度か登場しているが、いまだに商用化されていない。しかし、E-Inkはこのほどウェアラブル用有機TFT電子ペーパー技術とサプライチェーン構築に関する戦略的提携と投資を発表した。次世代とは2020年代後半のようだが、数百億ドルの市場であれば、そのくらいの時間単位となる。

「ウェアラブル」表示技術への準備

Good eReaderのマイケル・コズロウスキ氏は、E-Reader関連情報を見落とすことがない人だが、E-Inkがプラスチック電子ペーパーに投資する、という興味深い記事(06/11)を伝えている。つまり数年以内に、フレキシブルなカラー電子ペーパーが市場製品に搭載され、5年ほどでウェアラブルで使われるだろうということだ。それまで「出版/読書」への利用場面を考えておくのも楽しい。

香港のE-Inkは、基本技術や製造設備までを擁し、市場の大部分を支配しているが、同時に電子ペーパーの総合プラットフォームを構築している。Plastic Logic (PL) のようなファブレスのエンジニアリング・デザイナーが必要とする設備をモジュール単位で提供できる。20世紀に入って拡大した製造業の形態だ。PLの技術は、ケンブリッジ大学で生まれ、ドイツのドレスデンで起業したが、ロシアの資本を導入しながら継続してきたのは、ファブレスのおかげといえる。

Plastic Logicの「電気泳動方式」は、カラーとウェアラブル、教育、医療分野などで当初から優位が認められていたが、採算性の低さとライバル技術(OLEDなど)の進化によって、まだ独自の大型市場を発見できていない。逆にE-Inkは成熟した技術の寿命をさらに延長することで、ハードウェア企業として異例の安定を維持している。筆者がE-Inkのプロトタイプを初めてMITで見たのは30年あまり前のことだが、まさかこの技術とそれを継承した企業がここまで成長するとは想像できなかった。デジタルは儚いがアナログは強い。

中露が主導する次世代技術

さて、50年ほど前にケンブリッジ大学で生まれた技術は、現在ロシアの国営企業 Rusnano(ナノテクノロジー研究所)の下で開発を続けている。当初は電子教科書に採用されると考えられたが、これも実現していない。E-Inkと提携するPlastic Logic HKは、中国でカラー電子ペーパー、カラーE-Book(製品化は Onyx Boox Youngy Book)を製造しているようなので、遠からず目にすることになると思われる。カラー電子ペーパーは、ここ30年ほど「いつか必ず」技術のひとつだが、最初の実用化市場を見落とさないことだろう。

デジタル技術が人の頭の中で生まれ、発展し、伝えられるのに対して、アナログ技術は植物の種子のように護り、育成され、大きなテクノロジー市場サイクルで価値を見出され、急速に開花する。電子ペーパーは、日本にもやってきたが、大きな成功をみることなかった。どうやら電子ペーパー技術は、ロシアや中国で開花する巡り合わせなのかもしれない。 (鎌田、06/18/2019)

Speak Your Mind

*

Scroll Up