EPUB3停滞の原因と’3.2’の登場

W3Cは5月、久々の更新となる EPUB 3.2仕様を採択した。思わず日付を確認したほどの更新だが、いったい何があったのか(なかったのか)、納得のいく説明を、Publishers Weekly (06/21)のビル・カスドーフ氏の記事で読むことができる。ともかく、IDPFからW3Cへの移管の前後で停滞していた問題が片付き、リスタートが期待できそうだ。

W3CでEPUBの安定は保証されたが…

EPUBは間違いなく国際標準だ。その位置は不動で、W3Cによって保証されている。しかし、では最新版(3.1)の主要な機能が多くの製品で実装され、コンテンツが生まれ、使われることでブックビジネスの成長に貢献しているかと言えば、それとはほど遠い。価格・機能的に使いやすく、信頼できるツールはどこにあるのか、見えない状態では無理もない。「Kindleだけを行く先にすれば考えるまでもない」市場が続いているためでもある。EPUBは安定しているが、Web出版市場は、技術的に停滞しているということだろう。

結果として、EPUB3のために人々が費やした努力の大部分は(多国語関係を除いて)いまだに結実していないと言えるだろう。つまり、10年以上前のEPUB2 (2007)で間に合ってしまっている。日本語が使えるようになったわれわれは別として。

カスドーフ氏は、EPUB3/3.1の普及が進んでいない理由(障害)を3つ挙げている。

  1. 電子出版をWebの進化と同期させるようになる大きな前進であったが、半面で下位互換性を持たない機能を含んでいたため、出版社は両方のバージョンに対応することを躊躇した。
  2. 認証ソフトウェア ePubCheck が3.1をサポートするように更新されなかったので、認証手段がなかった。
  3. EPUBがW3Cに移管された結果、EPUBが放置されるのではないかとう疑念と(その半面で)任せておけばよいという無気力が広がった。

EPUB 3.2でEPUBは再始動するか?

おなじみの鶏と卵の話で、新機能を普及する環境を欠いたままで、市場が育たず、ツールもアプリケーションも出るわけがない。しかしこういう時は技術的な問題ではなく、たいていはおカネの問題で、それを使って何をするのか、という「気」が失われている場合が多い。

上記の問題を打開するために、EPUBグループは2点で重要な対応を行った。(1) 3.1仕様の問題を改善したEPUB 3.2、(2) 認証ツールePubCheck 4.2.1(3.2、3.0、3.0.1を確認)。これらの対応が停滞していたのは資金不足なのだが、カスドーフ氏によれば、IDPFから移行したW3C Publishing Business Groupが資金を拠出し、問題は打開されたという。これらが本当に問題を解決するのかどうか、注視する必要がある。 (鎌田、06/25/2019)

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