「業界」の時代は終わった

「歩調には活気があるが、駆け回る音はない…」。
5月27-29にニューヨークで開催された BookExpo  2019を伝えたPublishing Perspectives (Porter Anderson=05/29)の記事だ。ロゴは変わり、出版社が占めていた場所は「非書籍商品」のショウのためのテーブルと椅子で占められていた。あとは「お客さん」を待つだけだったが。

そして「業界」はいなくなった

米国のブックフェアは、年間の出版スケジュールにおけるB2Bイベントで、主として版権売買と小売流通にフォーカスしていた。書店に仕入れ、販売の計画を立ててもらうための、出版社の展示・販売イベントで、著者・読者・図書館関係者は、取引に花を添える重要な「ゲスト」といった存在だったと思う。1947年に書店業界が主体となって発足、1995年にリード社が開催主体となったことは、市場の主役が出版社と大型書店となったことを反映していた。

そして2019年には出版社も「イベント」の主体となる意味を失っていた。Bayker & Taylorも消え、出版における流通が(消費者の需要の3分の2を占める)アマゾンに集約されたからである。リード・エキシビジョンの対応は、版権ビジネスの拡充、「ノン・ブック」の拡張、翻訳市場など、テーマの多様化(分散)であったようだ。

最大の集客は「オーディオ」

アンダーソン氏によると、最大の参加者を集めたのは「オーディオブック」であり、これがオーディオブック協会の主催によることを考えれば、ビジネスの核が見えない状態なのかもしれない。大会場での基調討論は、ペンギン・ランダムハウスが資本参加して注目を集めた総合出版社 Sourcebooks が主催したものだったが閑散としていたようだ。

つまり、出版界で「気」が動いていたのは「オーディオ」だけということだ。9月にナッシュヴィルで開催される Digital Book World(かつてニューヨークで行われていたもの)のほうがビジネスがありそうだ。出版社と書店という2つの焦点を持つ楕円を描いていた時代、BEAは開催地を移動していた。「リード時代」はほぼニューヨークに固定したが、もはや出版社は外へ出るエネルギーを持っていないようだ。 (鎌田、06/04/2019)

参考記事/写真

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