B&Nの未来はどちらに?:Readerlinkの登場

Barnes & Noble の方向は、ヘッジファンドによる買収で決着し、あとは英国人のドーント氏の手腕に期待することにした人は多かったと思うが、総額4億7,580万ドル($6.5/株)の価格に「安すぎる」とクレームを付けた株主が応札権を主張して登場して、決着が延ばされた。Readerlink LLC は、シカゴ近郊の出版・流通サービス企業で、B&N株を3.4%保有している。

データ管理で書店は再建する(!?)という自信

Publishers Weekly (06/11)によると、デニス・アバウド氏が率いる Readerlink Distribution Services (RDS) は、玩具など大規模な非書籍商品を集めた積極拡大路線をとると主張している。同社の最初の締切(過ぎるとと400万ドル追加)は先週木曜夜だったが、すでに超過しており、最終的な決断は3Q期末とされている。関係者は何もコメントしていない。

RDSはB&Nとも取引があるが、売掛などが積み上がっているかどうかは不明だ。いずれにしてもコストを支払って権利を手に入れたわけで、B&Nや Waterstones とは別のビジネスプランもあったことが明らかになった。イリノイ州オークブルックに本社を置く書籍卸会社で、ハードカバーと量販本 (mass merchandisers)では最大手とされる(小売店が6万6,000)。B&Nなどの大手は、ハードカバーを出版社から直接仕入れるので、RDSの顧客は中小書店が大部分とみられる。ちなみに、シカゴは米国出版ビジネスの(もう一つの)中心であり、ニューヨークと違う堅実な風土を持つ。

筆者も知らなかったが、大書店と卸を中心とした書籍ビジネスの衰退に逆行するように、同社は事業を拡大している。全米5ヵ所に流通センターを有する (2016年)。数年前から B&Tから地域流通会社や出版社を買収したのを始め、出版のサプライチェーンへの投資を強化してきた。売上は10億ドルに満たないが、従業員は1,300人で、拡大している。この成長は、Title Information Planning System (TIPS)という独自のカテゴリ管理による「調達/補充情報計画システム」が成果を上げているとされる。

返本なし、売切りに近づける「カテゴリ管理」モデル

これは伝統的な書籍流通が日本の取次(返本制)と同じく「架空売上」「市中在庫」で動きが鈍くなったことに対応した新しい動きである可能性が高い。出版の大衆化に伴う「バブル」は、出版社の「過剰生産」で生じた「返本」が、出版社、流通、書店でそれぞれ積上がった結果とされるが、三者の合意が困難で、根本的な対策は放棄されてきた。おそらく、Readerlinkは、市場ニーズの正確な把握を徹底し、現金決済に近づける、という「出来ることをやる」ことによって、印刷本流通に対する自信をつけ、さらには巨大なチェーンストアという「恐竜」も動かす自信を得たのかも知れない。返本なし、売切りの量販本というモデルを土台にTIPSを展開し、B&Nのスケールを視野に収めたとすれば理解できないことではない。しかし、売上10億ドル以下のRDSにとっては大きすぎるので、パートナーを求めているのだろう。

いずれにしても、Readerlinkの「挑戦」には、期待したい人も多いだろうと思う。それは、流通という印刷本出版の最大の弱点に目を向けているからだ。それは半世紀前にB&Nが挑戦し、チェーンストアという答を得て、書店の可能性を多くの人々に拡大することに成功したことを想起させるものがあるからだ。ドーント氏の実績とスタンス(「再建に魔法はない」「コストカットはしない」)は十分に説得力があるが、希望がなさすぎる。逆にReaderlinkは「データ駆動」という、技術的に期待はある。英国のThe Bookseller誌 (06/13)のフィリップ・ジョーンズ氏は「書籍ビジネスの将来をめぐるバトル」と呼んだが、たしかにそれほどのものなのだろう。 (鎌田、06/18/2019)

Speak Your Mind

*

Scroll Up