中国出版の新しい波 (1):海外出版への視点

米国と並ぶ出版市場となった中国は、国内出版物を除いても独自のトレンドを発信し、世界に影響を与えるまでになっている。ポーター・アンダーソン氏は最近の中国出版情報から、フィクションとノン・フィクションのヒットをそれぞれ紹介している。印象としては、大国の出版市場として成熟し、新しい国際化を強く志向していることだ。

「出版大国」として成長を続ける中国

出版は、社会の耳であり声である。そこからは多様性と柔軟性(つまり文化的活力)を知ることが出来る。中国知識・体験はさほど多くない筆者だが、これまで数回出張・滞在し、海外イベントで様々な中国人と話をし、この10年ほどはWebでの情報も急速に充実しており、中国の活力を理解することができる。フランクフルト・ブックフェア傘下の国際メディア Publishing Perspectivesが毎月配信している中国のベストセラー情報は、米国の Trajectoryと中国のOpenBookの協力により提供されている。これらは書店とE-Bookの市場の半数ほどを把握しているようだ。

欧米の出版社からみた中国は、1980年代からかなり深く付き合ってきた日本の出版関係者のそれとは当然大きく異なる。これは欧米の付き合いが、ほとんど1990年代後半くらいからで、街も人も文化も変わって以降、そしてWeb(ほぼ2000年)以降の「中国2.0」が中心であることによる。市場規模にして数十倍、しかもあらゆる方向で(需要も供給も、輸出も輸入も)成長を続けている。これを「バブル」と一括する見方はもう消えた。バブルも普通の現象なのだ。欧米出版社は、多様性に富んだ、豊かな文明大国が新しい成熟期を迎えているものとして見ている。

独自の眼でコンテンツを発掘

彼らは、中国人がどんな本を読んでいるか、とくに欧米市場と比較可能な本に注目している。たとえば、古いところでジュール・ヴェルヌや(日本でいえば)江戸川乱歩のような作家がなぜ、いま支持されているかも分析されている。マーケティングが本格的になってきたのは、もちろんWebアナリティクスのおかげだ。Trajectory(ボストン)は、テクノロジー・コンサルタントの専門会社だが、マーケティングにフォーカスしている。

Publishing Perspectivesのポーター・アンダーソン編集長は、5月のベストセラーを、英国のYAフィクション本と、フランス人の国際ビジネス・ドキュメント本の中国語版に注目して紹介している。前者は、無名に近い新人を中国人読者が大ヒットにした事例。後者は米欧貿易戦争の(あまり注目されてこなかった)重要な側面を伝えるビジネスマンの証言で、ファーウェイの任正非CEOがすぐに「読んだ」ことでも注目されたものだ。

フィクションでは海外の有名作家だけでない(とくに青少年の)独自の眼を感じさせ、ノン・フィクションでも「なぜ、いま、何が」という問題意識が明確になっている。今後さらに交流が進むことで日本の出版にとっての重要な市場となることは間違いないと思われる。 (鎌田、07/02/2019)

Speak Your Mind

*

Scroll Up