「時代は変わっている」とクーンツは言った。

翻訳や短編、ノン・フィクションなどで独自の領域を開拓してきたアマゾンの出版部門 (Amazon Publishing、以下=AP)が、米国を代表する作家の一人で日本でもファンが多い、ディーン・クーンツとの間で5つの契約を行ったことをPublishers Weekly (07/22)が報じた。創作力の頂点にある作家がアマゾンを選んだことは、出版の新時代を象徴するものだ。

5億冊のベストセラー作家がアマゾンと大型契約

ディーン・レイ・クーンツ (1945-, DRK)は、SF、ホラー、ミステリ、サスペンスなどのジャンルを超える手法で、1980年代からベストセラーを量産している。そのストーリーテリング能力は文字を超えて映像化作品も多い。今回APが7桁で契約したのは、Thomas & Mercerブランドでの5巻ものセットのほかに、Amazon Original Storiesブランド(デジタルとオーディオブックのみ)での短編6作品というもの。前者は北米での通常版権で、後者は英語版の世界出版権を取得した。出版開始は11月からになる。

エージェンシーも「ビッグファイブ」を見限った

DRKはこれまでにもアマゾンから出版したことがあるが、最近はビッグファイブから出版していた。5月に出た最新作 'The Night Window' はPRH傘下の有名ブランド Bantam Books から。アマゾンに決めたのは「マーケティング能力と洗練されたパブリシティ・プランを評価した。非常に野心的、創造的なプランを提示した。」ためという。今回のエージェントとなった大手エージェンシーInkwellのRichard PineとKimberly Witherspoonは、アマゾンが「累計販売5億冊を売ってきた作家が、それ以上を期待できるものだ」と述べている。「時代は変わる。それは変化を理解し、支持するところに活気をもたらす」とDRK。

APは2018年だけでも、バリー・アイスラー (Barry Eisler, 1964-)、T.R. レイガン (Theresa Ragan)、ロバート・ダゴーニ (Robert Dugoni, 1961-)の3人のベストセラー作家と契約したほか、シルヴィア・デイとパトリシア・コーンウェルが続く。米国の出版界は、ドイツ系(ベルテルスマン)のペンギン・ダンダムハウスが圧倒的な力を持ち、同じくドイツ系のマクミラン(ホルツブリンク)、フランス系のアシェット(ラガルデール)、英国系のハーパー・コリンズが並び、米国企業はサイモン&シュスター(CBS)のみ。20世紀末に進んだメディア再編の結果、出版社が大手メディアグループの下に入った結果だ。では、Web/デジタルを意識しつつ始まった出版界の「ビッグファイブ体制」とは何だったのだろうか? (続く)  (鎌田、07/23/2019)

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