2020年の「リスタート」(2): 書店=出版システムの没落と再生

「商品/市場」と、「情報/社会」という両立困難な性格を産業的に維持してきた活字出版システムは、デジタル/Webの登場とともにほぼ30年あまりで終わりを迎えた。日本においては、このシステムがマンガと雑誌とともに維持されてきたことを忘れてならない。だからこそ、いまがその時だと言えるのだ。

マンガが支えた日本型出版の樹

2018年のコミック市場全体の販売金額は、4,414億円 (1.9%増)だった。内訳は、紙のコミックスが1,588億円 (4.7%減)、紙の雑誌が824億円 (0.1%減)。デジタルコミックスは1,965億円 (14.8%増)、同雑誌37億円 (2.8%増)。書店で現金が動く部分が細っていることに驚く。

デジタルはマンガの過半を占めるが、800億円以上を売上げ、出版サイクルの原動力である雑誌は圧倒的に紙(書店)に依存する。つまり土台が弱い。この土台は、コミックスだけでなく、書籍・雑誌をも支えているとかねてから言われていた。1997年のピーク時、5,700億円が書店を通過していた時代と比較すれば、5分の1以下。これでは書店の減少が加速されるしかなかった。デジタルが流通とコミュニケーションの土台を支え、紙という文化性の高い印刷物を扱う書店を支えるべきだったのだが、デジタルの果実は出版社が独占してしまった。生き残るためだ。

マンガがデジタルとなることで、紙の出版の土台は危機的な状況なのだ。紙の出版を続けるには、日本では雑誌とマンガで、流通量を維持していくことが必要だった。最も売れる確率が高い定期性のマンガ雑誌が週刊雑誌を、週刊雑誌を月刊雑誌が、そして月刊雑誌が新刊・既刊の単行本を支え、全体として活字を売ってくれる書店を支えるようなイメージだろうか。世界に例を見ない流通は、20世紀の終わりまで維持された。出版社は活字のデジタル化を遅らせ、マンガを優先させたが、それで活字出版の延命に繋がったとは思えない。読書の量と質、売上と利益のいずれも、この20年に衰退した。

本・著者・読者が出会える21世紀の書店

1997年までは流通量を拡大することで成長を維持していた出版が、一転して下落に転じたのは、流通、出版、消費それぞれにまだ余裕があったのだろう。出版が縮小する市場だとは信じられなかったのかもしれない。

版の効率最大化を原理とする印刷本(版)ビジネスは、利益目標を達成する最少販売部数はもちろん、市場での販売部数・最適小売価格を予測できないために、採算割れの確率が非常に高い。総流通量を管理できないために、採算を確保し、再生産可能な利益を出すことなど不可能に近い。マンガと雑誌が印刷本ビジネスを維持した貢献度は非常に高かった。逆にその心理的依存が出版界の危機感を薄くしていたとも言える。

21世紀初頭の変化が緩慢であった分、Webの普及2010年代以降の変化は、速度を速めた。現在直面しているのは、集客、販促の両面で書籍出版を支えてきた書店、定期性出版物の急減少である。米国の印刷本ビジネスを支えたのが大規模書店であったとすれば、日本では出版の支柱であった小規模書店だった。それらは、ともにオンライン書店に置換えられた。

江戸の木版システムを(産業的に)支えたのは、草双紙であったように、マンガは日本の出版文化を支えた。しかし、ビジネスモデルがあまりに脆弱だったために、一般書籍を支える側に使われ、書店の疲弊とともに衰退した。

デジタルのビジネスモデルは、最初からマンガで発展するだろう。最初に「海賊」を儲けさせてしまったが、これは書店への配分など思いもよらず、最初からデジタル商品を嫌い作らなかったのが大きい。デジタルも紙も、本と出版には必要なものだ。両方をバランスさせることでビジネスモデルは必ず見つかるだろう。 (鎌田、07/11/2019)

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