マンスリーレビュー(1):「業界」出版の終り

[EB2マガジン・マンスリー7月号]
前月のランキング・トップは、5月の米国のブックフェアの「衝撃的」な結果を書いた記事で、アクセスを集めた。思わず浮かんだタイトルだが、「業界」の「終わり」を漠然と語った。書くべきことは多いが、なるべく簡潔にまとめてみたい。出版というビジネスは、経済的・社会的・文化的に複雑なエコシステムの上に成立している。それが「唐突」に終わったという印象を与えたのはなぜか。[♥会員記事=期間限定公開7/18まで]

旧システムとしての業界(出版/流通/書店)

ブックフェアも含まれるが、「トレードショウ」という米国のビジネスイベントは、ITを中心としてよく足を運んできた。日本のそれが、業界の「お祭り」としての色彩が強いのに対して、あちらは「市場(売買)」をリアルなイベントとしたものであるところが違う。アメリカ的解放感の中にも、取引に直結した真剣さがあるのだ。「紙の本の内覧会的」なブックフェアにもそれがあり、日本では江戸時代で失われた、本屋が出版市場の主役であった雰囲気を感じさせていた。

しかし、B&Nのような大規模チェーンと大出版社が目立つようになった1980年代には、プロレス的な華やかさが目立つようになっていった。個性的な出版社と独立系書店の存在が薄まり、その結果「本」が軽くなったからだ。この「マス・マーケット」時代は、出版において「著者」と「読者」を意識することはほとんどなく、大手(出版社/書店)によるハリウッド的(スター主義)ビジネスの時代となった。「一般読者」には「各社新刊のある風景」でしかない。個人的には、最古の「情報産業」の一角が、デジタルでどう変わるかを考えたが、この旧態とした世界が、変わるきっかけは見いだせなかった。

「紙のためのシステム」は変えられなかった

しかし、永遠に続くものはない。出版における業界(出版/流通/書店)という閉じた三角形は、結局、弱い環から崩れた。パイプの中を通過する本が利益を生み出すことで繁栄するシステムが、機能しなくなった。「生産過剰」を管理しようにも、そうした合理的システムは生み出せず、流通から疲弊していった。結局、印刷本という難しい商品を、書店という限られたチャネルを通じて、社会の増大する情報ニーズに応えるビジネスモデルは、限界を超えたというべきだろう。

本格的なWeb普及から20年あまり、Baker & Taylorは倒産し、Barnes & Nobleもほぼ同じ運命となった。Book Expoという年間最大のイベントで、書店関係者は、閑散とした会場で紙の本の山と出会うことになった。市場の真の当事者(著者/消費者)より、業界で成立ってきたイベント(伝統的な産業インフラ)は存続が問われるようになった。紙の本の過半がWeb(つまりアマゾン)で販売される時代に、出版社は誰を相手に、どう商売をするのか。この問題は2010年代に入って問われてきたが、メディアは「紙の本」「街の本屋」が健在であるという話でお茶を濁した。予想通り、印刷本は残ったが、それはWeb書店によって維持されたに過ぎない。紙の本の市場を維持するためだけのシステムは、もはや出版という「社会性」を維持できない。ブックフェアは来年から新しい方向を目指すことになるだろう。本を守ることは出版の主目的とはならず、限られた世界でしか受け容れられないからだ。 (鎌田、7/04/2019)

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