米国出版社のオーディオブックが躍進

Audio Publishers Association (APA)は7月17日、有力出版社20社分についての2018年のオーディオブック販売統計を9.4億ドル(対前年比24.5%)と発表した。今回の調査の数字は出版社の卸販売額を集計したものだが、ストリーミングは売上の91.4%を占め、有力出版社だけでほぼ10億ドルに達したことになる。

20社の卸販売額が約10億ドル

ビッグファイブを含む20社の出版点数は44,685点。金額(前年比24.5%)と比べて同5.8%増であることを考えれば、単価が上昇していることを意味する。出版社としては理想的だ。1社の単純平均は470万ドル。小売金額としては12億ドルを超えたはずだ。

「市場」の数字には、調査の対象と方法いよって様々なものが生まれるが、市場の参加者と構造が固まるまでには時間がかかるので、正確でスピーディな情報が得られるようになる。オーディオブック市場は、CD/DVD時代から機能している APAが、ストリーミングに対応する必要があったが、そこではインディーズ市場が相対的に小さく、出版社が3分の2以上を占めていると推定されるので、APAもフォローしやすかったと思われる。こうした状況は、アマゾンが小売の8割あまりと推定されるE-Book市場より分かりやすい。

オーディオブックは、小売、制作、コンテンツという3つのプロバイダーから構成され、小売(配信)は30%。残りは出版社の売上となるはずだが、制作費(コスト)は方法によってピンキリだから、出版社の粗利は容易に推定できない。Audibleは、制作・販売を兼ねたビジネスモデルだが、これは文字系の製作でアマゾン出版/KDP(紙・E-Book)とKindleを持つのと同じ構成だ。企画、制作、マーケティングを、機能的に分離しつつ連携させる方法が伝統的な出版において重要なテーマなのだが、「オーディオ」においてアマゾンはAudibleを中軸に据える形をとっている。

3機能の連携は、小売中心のアマゾンでさえ、これだけ一貫戦略を重視しているのだから、どのサービスにいても、アマゾンに依存するか、別の連携パートナー/独自の戦略が必要となる。最も基本的なな選択は、ジャンル、著者など、市場(読者層)を絞込み、オーディエンスを形成するというものだろう。そうした意味ではジャンル別の市場調査が貴重だ。

「オーディオ・ファースト」も増加

APAの調査では、人気のジャンルは、一般的なフィクションで、ミステリ/スリラー/サスペンス、SF/ファンタジーだが、2018年の本数ではノン・フィクションが32.7%を占めたのが注目される。一般/歴史/伝記/自己啓発だが、昨年はノン・フィクションの「当たり年」で、政治系や記録的なヒットとなったオバマ夫人の自伝がリードした。ノン・フィクションの場合は著者のキャラクターの強さによるが、ノン・フィクションも紙と同じ強さがあることを証明したと言えよう。

APAは、オーディオブックの出版が活字版を前提としたものから移行を始めているとみており、一昨年から「オーディオ・ファースト」出版物のパフォーマンスを記録している。2018年では金額で11.2%、数量で37.7%がこの形をとっていたことが分かった。これは「活字対応物の存在はオーディオブック出版の前提ではない」ことが受け容れられつつあることを示しているものと思われる。 (鎌田、07/22/2019)

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