21世紀の「クロス・フォーマット版権」訴訟

Audible Captionsは、文字言語と音声言語がAIによって互換性を獲得して初めての重要な機能となりそうだ。米国出版社協会(AAP)は8月23日、Audibleを被告として著作権法に基づいた提訴を行った。原告にはAAPのほか、ビッグファイブの大出版社などが含まれている。AAPのマリア・パラントCEOは、「著者、出版社、そして著作権法を計画的に蹂躙・侵害したことに失望した」と述べている。

出版社がAudibleを提訴

Audible Captionsは、オーディオブックのコンテンツに対して、文字を使った「クロス・フォーマット」のサービス機能を提供するもので、教育機能として注目されている。しかし、出版者側は、オーディオ出版権しか持たないAudibleがこうした機能を提供するのは版権の侵害であり、不正確な場合には著作者人格権の侵害(disservice)である、と主張している。

原告となったのは、Chronicle Books、Hachette Book Group、HarperCollins Publishers、Macmillan Publishing Group、Penguin Random House、Scholastic、Simon & Schusterの計7社。ビッグファイブ+2社ということになるが教育系出版社は含まれていない。Audibleの「クロス・フォーマット」サービスには、読者のためにAudibleとKindleコンテンツを連携させる“Immersion”機能があるが、これは音声も文字も版権を取得した合法的サービスであって問題はない。Captionsは、AIの自動活字化機能を使った無償サービスで、読者が任意のサービスと合わせて使うことが出来る。

自動変換時代の言語表現の著作性をどう決めるか

今後、法律的・技術的・商業的・社会的な問題は法廷で議論されることになるが、AAPが最も懸念しているのは、Audible(アマゾン)がAAPなどと協議をおこなうことなく、このAI時代の「自動サービス」を一方的に推進するつもりであるとも見られることだ。文字化/音声化(TTS/STT)は、WebとAIによって急速に実用化した技術で、音声スピーカーを通じて汎用的ユーザーインタフェースとなった。他方で、版の希少性と商業価値を根拠とした「版権/複製権」は、複写・解析・複製時代に空洞化が著しい。

もちろん、Audibleは文字版権を侵害する意図はなく、言語本来の機能を利用してサービスを提供することでコンテンツのユーザー価値を高めることを意図し、逆に文字版権の自動音声化(TTS)は当然のことと理解していると思われる。文字と音声の「著作性」、トランスレーション/フォーマットを超えた言語表現物の著作性はそれぞれどう定義されるべきか。裁判所が何年かけてどう判断するかは重大な意味を持つが、アマゾンはかなり自信がありそうだ。 (鎌田、08/27/2019)

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