出版の転換に成功した中国(1): デジタル

世界規模での出版の基盤のデジタル転換は、かなりの確率で今年になるだろう、というのが筆者の仮説的な予想なのだが、それには、米国と中国という世界の2大市場の帰趨が関わり、信頼性のある情報の入手に依存する。米国の場合、それはほぼ見えたのだか、中国の場合はどうか。北京の民間調査会社OpenBookが発表した2019年7月のレポートは、まさにそれを告げたものと言えそうだ。

成長するデジタル、下落を始めた紙

今年前半の出版市場は、前年同期比で10.8%と好調が続いている一方で、印刷本の低下率が11.72%と加速していることが注目される。ポーター・アンダーソンは、OpenBookの2000年以降のデータをもとに、2017年をピークに印刷本が減少に転じていることを指摘し、これを「スプローリング」と呼んでいる。つまり「不均衡発展」という現象で、紙とデジタルの間の成長力の格差が顕在化しているということだ。都市の郊外が成長する一方、都心部が衰退する現象は常識的なもので、旧出版はこれを恐れてデジタルの拡大を止めてきた。

出版市場(読書人口)の自然な成長が続いている中国では、2012年までは紙もデジタルも成長を示していたが、2013年以降は在来出版が停滞(微減)に転じて、デジタルとの成長格差が顕在化し始めたが、2017年からはそれが深化した。これまた水の流れのように自然な現象で「市場経済」では起きなかったイノベーションが、21世紀の中国で実現した事実は知っておいたほうがよい。

中国共産党の政策転換:21世紀的市場管理

21世紀の中国共産党はデジタルも市場も怖れてはいない。それは管理する方法と技術と体制を知っていればこそだが、その確信はそう前のことではない。10年ほど前までは、E-Bookは試行段階で、価格も高く、人々は伝統的に紙と印刷をより尊重していた。デジタルへの傾斜は、以下のような条件が必要だったはずだ。

  1. 環境の変化(価格、入手性、機能性などの向上)
  2. 経済・社会と消費行動の変化
  3. メディア行動の変化(Web/モバイルSNSによる情報環境)
  4. 出版という社会的経済活動をデジタル中心で管理する党の決定

習近平政権下の経済構造改革の基本は、AIを推進力とするデジタル・イノベーションにあり、それが成長を維持し、低成長の罠にかかった米国など旧先進国に脅威を及ぼした理由だが、それと出版が大いに関係していることは、まだ理解されていない。 (鎌田、08/16/2019)

 

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