「本屋」はどう変わったか?

英国最大の書店チェーン、ウォーターストーンズ (Waterstones)は、 1982年以来、500あまりの小書店を閉店に追いやったと言われているが 、創業者は最近BBCのインタビューで「そのことに心の痛みは覚えない」と語った。同社も1993年に WH Smith(その後HMV)に買収され、ロシア資本を経て、最近米国のヘッジファンド、エリオット(Elliott Advisors)の手に渡っている。

20世紀後半は書店における「工業化時代」

ティム・ウォーターストーン は、サッチャーの「改革」でシティを中心に米国スタイルの都市に変貌しつつあったロンドンで開業した。開店時間が長く、日曜日も営業している店は新鮮だった。筆者も新しい「アメリカンな書店」として記憶している。周知の通り、ここを買収したエリオットは、Barnes & Noble (B&N)の買収に手が届いており、英国人のジェームズ・ドーント氏による再建が期待されている。ウォーターストーンが範としたB&Nは、1886年(明治19年)の創業。日本の三省堂書店(同16年)と同じ頃だ。

B&Nは、共同創業者のジョン・バーンズの家系 (1917-64) の手で名門書店として拡大した。しかし、1960年代の書店には「全米規模の市場」に新しい可能性が開けており、それには「経営者」が必要だった。1971年、工業高校出身の米国人のレナード・リッジオがニューヨークの店舗を買収し、のれんを踏襲した。彼はテクノロジーとマーケティング、そして出版社、ライバルとの交渉術など、伝統的な家族経営の書店関係者が持ち合わせなかったスケールと華麗さを、このビジネスに持ち込んだ。アメリカの独立系書店には、ヨーロッパ系の(出版社をやっては失敗する)インテリ・タイプが多いのだが、1980年代には大都市を代表する書店は、B&Nか Borders Groupのものばかりになっていた。1994年にジェフ・ベゾスが「Web書店」を発表した時には、「1年ともたない」と考えた人が多かった。

B&Nと「アマゾン書店」はどこが違ったか

ティム・ウォーターストーンやレナード・リッジオは、見事なまでにクールな「ブックビジネス」を描き、ロジスティクス、店舗戦略、デザインを一貫させた。しかし、1970年代までの出版文化を一変させ、「読者」を「マスマーケットの工業製品の消費者」に還元した「モダン」な様式は、今にしてみれば行き過ぎで、アマゾンによる「レボリューション」を可能にした理由だと筆者は考えている。

Webでのユーザー・エクスペリエンス(UX)によって、「本・著者・読者」のバーチャルなサプライチェーンをアマゾンは実現した。読者を物理的な存在としたB&Nのチェーンは、必ずしも単なる物理的な存在として拘束されたくない「読者」を失っていったのだ。逆に、アマゾンがオンラインの優位を単なる利便性、機能性と考えていない証拠は、リアルのAmazon Books (書店)におけるUXの一貫性に見て取れるだろう。

「書店における本と人とのつながりの喪失に心の痛みは覚えない」経営者は、やはり「20世紀の」経営者として、人々からは忘れられることになると思われる。 (鎌田、08/06/2019)

参考記事

 

Speak Your Mind

*

Scroll Up