「フェアユース」の新しいページは「デジタル変換」か (♥)

アマゾンAudible Captionsへの「著作権侵害」訴訟は、予想通り「フェアユース」事件となることが明確になった。9月12日に弁護側が法廷に提出した文書(pdf)は、Captionsが原告の権利を侵害するものには当たらず、提訴を却下するよう求めたもので、すでに版権コンテンツは「サービス実験」の対象としないことを表明しているので、訴訟はCaptionsの適法性を確認するものとなる。[全文=会員]

アマゾン・サーバが音声→文字変換・表示

「フェアユース」は米国以外ではまだ定着しているとは言えない。それを必要とする「社会的現実」と直面したのは米国であり、提起したのは米国の世界企業Googleと、米国の大規模図書館であり、最大の当事者として登場したのが最大の出版産業だったからだ。だから、この先進的な判決はまだ社会を変えてはいない。「版権」という仮想的な概念は整理されずにあり、無数の「私権」とともに生きているためだ。この法理はただ、避けることが出来ない問題を社会に対して宣言したということだろう。「Audible対出版社のフェアユース」事件は、第1ページなのかもしれない。

Audibleの補足説明によれば、Captionsの画面表示は、オーディオブック再生時にそれと同期する形で最大20語までを表示するので、文字書籍の代替となることは実用上あり得ないという。表示されるテキストは、Audibleからアマゾンのサーバーに送信された音声を文字変換し、一時的にユーザーデバイスに保存され、逐次表示される。再生スピードによっては変換上の問題もありそうだ。AudibleはCaptionsの公共的利便性として、言語学習などにおける効率の向上、聴覚と視覚の同期能力の向上(補助)などを挙げている。

公共的便益が多きく(営利性が低く)、著作権者への影響が小さいほど、アマゾンには有利となる。この段階ではアマゾンの勝訴の確率は比較的高いと思われる。とくにニューヨークの連邦裁判所では。しかし、この裁判は「音声サービス」の領域を拡張するかどうかの第一歩になるものだけに裁判は長いものとなり、Googleの時のような証言を含んだ長いものとなるかもしれない。

Web時代のフェアユース法理は定着するか

Audibleの立場は、フェアユース法理をはじめ、過去の判決で確定している二次著作権侵害案件においても正統性が立証されており、公共の利益の観点からも支持されるものである、と主張するのはl周到に準備された論拠であることを示している。ポイントとなるのは以下のような点だと思われる。

  1. 被告は原告の許可条件を侵害していない。
  2. Audible Captionsは、オーディオブックの価値を拡大するものであり、Audibleの商業性はそのことに影響しない。
  3. Captionsは、版権で保護される素材を、公正な利用における「合理的に必要な範囲内」ででのみ使用する。既存のE-BookおよびImmersive Reading Productsを置き換えるものではない。

判例リストとして50件あまりが掲載されているが、直接フェアユースに関わるもの、トランスフォーム利用に関するものは具体的に確認できていない。

Google判決に対する日本の著作権関係者の反応は「冷淡」と言うしかないものだった。つまり、「日本の法慣習になじまない」という回避主義だ。これでは紙と版とともに著作権が消えるのを待つか、それとも関係者が「複写権 (copyright)」とは別起源の著者権 (authors' right)を国際機関が再定義するのを待つしかないだろう。 (鎌田、09/26/2019)

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