マンスリー・レビュー:(1) 中国Web出版の「奇跡」

8月の人気記事は「出版の転換に成功した中国」だった。中国とWebという大テーマに手を付けるという意図はなく、ただ市場のダイナミズムを理解する手がかりとして、テクノロジー、社会システム、それに国家戦略もキーワードとして考えてみた。多くの人に関心を持っていただけたことは嬉しい。多くの人と共有できることで視野と知識が広がることを期待している。

明治政府的「出版改革」のWeb 2.0版

これまで、テクノロジーとメディアのビジネスでは米国が世界をリードしてきたし、本誌もその延長で米国の市場とビジネスモデルに注目し、そこからWeb時代の出版を理解しようとしてきた。E-Bookが登場して10年目の昨年、出版の世界市場で中国が初めて米国に並ぶ存在として登場したことは、筆者にとっても衝撃だった。急成長を可能としたものがあるとすれば、デジタル(Web)以外にはないが、中国がこれを自在に使うには、19世紀に一度失敗し、20世紀に社会主義で挑戦した近代化問題を、複雑な21世紀に解決できるかどうか疑問だったからだ。「中進国の罠」も難しいと言われ、これを克服して先進国となった日本も、バブル以後の泥沼に沈んでいる。しかも中国には「共産党」という21世紀の成長戦略には難しい「体制問題」がある。

それらを言えばきりがない。しかし、結果として中国は無数の問題を解決しつつ、21世紀の出版大国としてデビューした。これは近世以来のことで、巨大な人口と三千年の遺産を合わせて市場化する方法を発見したことになる。これは半世紀前に『毛沢東語録』が世界的「ベストセラー」になったのとは話が違う。市場の現象として米国と並ぶ規模となった理由は、ふつうの中国人があらゆる種類の本を読み始めたこと以外ではないからだ。日本の明治政府から120年あまり後に、中国政府はデジタル出版の読書/市場を丸ごとコントロールしたことを意味するのだが、そう理解していただいて間違いはないだろう。しかも統制と指導ではなく、市場デザインとマーケティング主導という、21世紀のシステム資本主義で…。(2)に つづく  (鎌田、09/05/2019)

 

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