米国読書市場の10年 (1):強まるデジタル

ニューヨークのピュー・リサーチ (PRC)は今年2月に行われた読書調査の結果を発表し、2010年代の9年間のフォーマット別読書において、音声読書が2倍近くに増えていることを明らかにした。過去1年に1冊以上の本を読んだ人は72%と7割を確保したが、紙の本は65%と3人に2人。オーディオはほぼ一貫して増え、5人に一人に達した。E-Bookは4人に一人で低迷している。

文字は3分の2、オーディオブックは2割を超す

PRCの調査では、読書を (a) 本を読むか、(b) 紙の本を読むか、(c) E-Bookを読むか、(d) 本を聴くかについて聞いている。E-Bookに続き、オーディオブックを「読書」の対象に含めることで、米国の読書を守ってきたことが分かる。

2011-12年は「紙の本」が6ポイント減少し、E-Bookが同じく6ポイント減少して(a) も5ポイント減少した。オーディオブック(A-Book)はまだ市場がわずかだった。2011-12年のPRCの数字を見て、筆者は「これからデジタルが市場をリードしていく」と考えた。大手市場調査会社プライスウォーターハウス・クーパース (PWC)が、2015年にはE-Bookが紙をリードするという予想を出したことをご記憶の方も多いだろう。

2012-14年には、E-Bookは5ポイント増加し、総合でも2ポイント増、となった。2014年以降の数字は、E-Bookの(価格値上げと)低迷による。紙は、この「相対的低価格化」によって4ポイントも反発した。その後遺症か、15年には6ポイントも下落し、その後も65%を維持するのがやっとだ。

8年あまりに起きた変化は、

(a) 本を読む人が(-7) 、

(b) 紙の本を読む(-6) 、

(c) E-Bookを読む(+8) 、

(d) 本を聴く(+9)、

ということになる。活字は7ポイント減らし、紙も6ポイント減らした。E-Bookの値上げが紙を下支えした可能性は高いが、E-Bookの成長の芽を摘んで、そのことによって「文字読書」を衰退させたことは確実である。唯一「読書」を下落から救ったのは、A-Bookによる音声読書であった。

オンラインがさらに市場を動かす

日本には対照させる数字はないが、文字も音声も、米国の数字より悪いことは確実だろう。そして、10年あまりで世界の出版市場(金額)のトップに躍進した中国で、デジタルが半分あまりを占めた。

デジタルの売上は、紙より安いが利益率は高く、市場アクセスは大きい。Web時代では、コンテンツ市場への影響力が重要であることを考えれば、紙の業界は、持続的な市場よりも現在の売上を優先させる政策をとってきたことになる。

19年初めの調査結果は、紙を優先させる政策の結果であり、しかも結局のところ、それがアマゾンとオーディオを推進させることとなり、紙の支援としては見当外れにしかならないのは、Web時代の「メディア」と「フォーマット」の違いについて理解していないためだろう。

Web時代(デジタル・ファースト)には、旧出版時代の常識が通用しない、というよりは逆効果となる。アマゾンはWebのゼロ年(1994年)にスタートして以来、Kindleを「中間点」としてデジタル・コンテンツを始動した。オーディオブックは音声読書として初めてのもので、普及率20%に達したことで「本」のビジネスはしだいに「紙/活字」から独立傾向を強めるようになる。アマゾン・オーディブルのキャプションの公判でその辺りを考えてみたい。 (鎌田、09/30/2019)

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