総合出版企業となったReaderLink

バーンズ&ノーブル(B&N)の買収に名乗りを上げたことで知られるようになった書籍流通のReaderLink社は、Inc.誌の全米5000社ランキングで #4,801にランクされたことが発表された。過去3年間の高成長が評価されたもので、9月で終了する2019年度の決算では売上が12億ドルに達するという。同社は、計8万店舗を擁する700の書店およびチェーンを顧客としている。

B&Nを諦めて仕切り直し

成長について、ReaderLink社のデニス・アバウドCEOは、流通ネットワークの整備などが背景にあると述べている(Publishers Weekly, 09/13)。しかし、Baker & Taylor (B&T)の市場撤退などの業界再編の影響は少なくないだろう。さらにB&Tの残存事業を取得する可能性は十分にある。しかし、すべてを統合してマーケティング指向の流通エンジンが駆動するまでにはまだ足りないものが多い。

同氏は2011年に ReaderLink(当時Levy Home Entertainment)を取得し、その後のM&Aによって規模を拡大し、10億ドルを超えるに至った。大手のファンドと競ってのB&Nの買収は「見せ場」をつくりはしたが、さすがに荷が重すぎたようだった。頭を冷やして戦略を仕切り直す時期だろう。

ユーザー(著者・本屋・読者)にとっての価値

ReaderLink LLC は流通サービス企業を標榜してきたが、書店と読者とのリンクを重視する姿勢は社名が示す通りだ。もはや書店と流通と書店は、それぞれが「最大」企業であっても出版のサイクルを通じて、ステークホルダーのために機能しなければ持続可能ではありえない。「業界内の順位」ではなく、ユーザー価値が評価される時代となったからである。同社はそこそこの出版社と流通サービスを手にした。「大書店」を望んだが、これは今である必要はないと思う。その意味で、出版社を拡張していくのは悪くないと思う。

同社の取扱商品では、かつては主力商品だった量販本は下落が続いて、最近は年率で10%を超す下落率となっている。他方で児童書は書店、読者との関係でも評価されており、これを強化していくことになるだろう。2015年にB&T傘下の出版社を買収したことで、Canterbury Classics、Portable Press、Silver Dolphin、Thunder Bayその他を取得したが、Printers Row Publishing Groupの下に統合した出版部門は1.5億ドルとなった。ビッグファイブを除けば、大きいほうだ。堅実な低収益事業は、読者との持続的関係として評価できるだろう。

流通系のデータ・インフラは強いと見られる同社に欠けているのは、読者系のデジタルだ。たとえば、Open Road Media (ORM)が盤石な体制を築きつつある。これは商品が「既刊・絶版本」でも大出版社のマーケティング・プラットフォームがつくれることを示したもので、ReaderLinkにも参考になると思われる。 (鎌田、019/28/2019)

 

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