ロンドンのFutureBook Live 2019で「データ・ガイ」登壇

英国の老舗出版情報誌 The Booksellerは、10月11日にロンドンで開催する FutureBook Live 2019の基調講演者に、Bookstatのポール・アバッシCEOが、Waterstones とB&Nのトップを兼ねるジェームズ・ドーント氏と並んで登壇すると発表した。オンラインでしか分からなくなった米英市場のトレンドを知ることが出来る機会として注目される。

Web時代の出版の見方を一変させた男

2014-2017年の本誌を賑わせた記事の情報源に、Author Earningsを創立、主宰した匿名のWebデータ解析アナリスト「データ・ガイ」の四半期レポートがあったことをご記憶の方も多いだろう。昨年からはポール・アバッシという本名で出版社向けデータ・サービスBookstatを創業して活動しているが、インディーズ向けの(つまり非営利の)活動は止め、AEやカンファレンスのような「表舞台」からは消えてしまった。FutureBook Live への登場はかねて待望されていたことだ。

The Booksellerのフィリップ・ジョーンズ編集長は、「デジタル・コンテンツ市場を知悉する少数の人間の一人で、E-Book市場の規模や構造、成長という困難なテーマに挑戦し、なぜ独立した著者やアマゾン出版、デジタル専門出版という、従来の業界の視野からは隠れていた事業が成長することが可能だったのかを明らかにした」と紹介している。B&Nを率いることになったドーント氏とともに招待したことにも意味がある。

宇宙望遠鏡クラスの発明

デジタルは見えない。しかし、Webによって「見る」ことが出来るようになったとも言える。この方法は、ビデオゲームがオンライン化して見えなくなった時に開発され、10年あまりかけて定着したものだが、アバッシ氏はその一人で、自分でもSFを書いていたという個人的動機から書籍の世界に関心を持ち、5年あまりで大企業中心のビデオゲーム産業とは性格の違う、しかしWeb上では似ており、オンラインストアでのサーバの動きから観察できるブック・マーケットから得られるデータは、出版社がこれまで見たこともないものだった。Bookstatは、出版社が必要とし、日常的な企画・販売活動のすべてに利用できる「タイトル毎のリアルタイム・データ」という画期的なツールをもたらすものだ。

BookStatは(額面通りならば)、リアルタイムのオンライン書籍市場データサービスで、オンラインストアが書籍販売の大半を占める現代において不可欠なものとなるだろう。出版社の仕事を大きく変えることは間違いない。しかし、アナリティックなブック・マーケティングは、その市場と商品の複雑さ(細かさ)のために、特別な「方法論」が必要になるほど工学的なのものだと思われる。伝統的な出版統計と比べれば、ケプラーの望遠鏡の観測記録とハッブル宇宙望遠鏡のデータの違いほどのものもあるからだ。それこそFutureBookのためのものだと思う。 (鎌田、09/28/2019)

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