出版社はKUとどう付き合うか(1):始動

アマゾンの定額制E-Bookサービス Kindle Unlimited (KU)は5年を経過し、読者に定着した。当初は距離を置いてきたビッグファイブ出版社だが、予想通り、今年は転換点となりそうだ。長い「テスト」を行ってきたハーパー・コリンズ社は、オーストラリア、英国に続き、北米への導入を発表した。ではなぜ、どう使おうとしているのだろうか。

「アマゾン無視」は限界だった

「定額」は、米国ではアマゾンのほか、OysterとScribdが参入し、前者は撤退し、後者は一時調整の後に再開した。HCは、数千点以上を(商業ベースで)提供しているはずで、本来ならばこちらに触れないのはおかしいが、HCにとってはKUのほうが「ニュース」なのだろう。そして、著者にとっても「KUもやってます」と出す価値があるわけだ。

Good eReaderは、HCのステートメントを伝えている。「弊社はこれまでオーストラリア、英国において Kindle Unlimitedへの参加を実験し、限られた数のE-Bookを提供することで、読者がこのサービスをどのように利用し、それによって著者の収入機会がどう拡大する方法を検討してきました。その結果、私たちはKindle Unlimitedを通じて販売を拡大し、読者がコンテンツにアクセスする豊富な選択肢を提供できると確信するに至りました。」なんとも慎重で悠長な実験だったようだが、ともかく、疑問の余地が少ないことが確認されたことは意義がある。

マイケル・コズロウスキ氏は、ペンギン・ランダムハウス、サイモン&シュスター、アシェットなどはHCの動向を注意深く見て、あるいは情報を得ており、来年早々にも参入を決めるだろうと述べている。しかし、The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏は、HCがScribdに千点単位で提供してきたことを指摘して、HC-KUの「ニュース性」に疑問を呈している。しかし、アマゾンKUは規模で他を圧倒する規模があり、「本のNetflix」と呼ばれるだけはある。

KUは使わないわけにいかない

KUの「利用規模」は、KDP Select Global Fund におおける月間ページ支払額で表示されるが、今年の月間平均(世界)では2,560万ドル、2019年の推定は3億ドル以上($299.4 M)と推定される。この金額の版権料を著者に支払う出版社は非常に少ないと思われる。3億ドルに対応するには(印刷本売上換算で)30億ドルほどの売上(利用)がなければ引き合わない。しかし、毎月9ドルの会費収入ではこの貸出し規模は実現困難だろう。

月9ドルの定額制「読み放題」サービスの採算は、著者/出版社とアマゾン、定額会員のいずれににとって、収益性が「高い」ものとはならない。KUの性格は、共同運営の貸本のようなもので、本が多くの人に読まれることで、その販売機会を拡大し、他のチャネルあるいは総売上を損なうことなく、版権者に一定の収益機会を提供するものということになるだろう。つまりは「書籍マーケティング」と有料の「コンテンツサービス」との中間ということだ。後者で読まれることで前者の販売が伸びることは少なくない。順位が高まったりレビューが追加されたりすることで、販売可能性が高まるからだ。KUが「成立つ」ためには、著者/出版者の合意と納得が不可欠だったわけである。 (鎌田、10/08/2019)

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