米国の出版専門誌Publishers Weeklyは、インディーズ作家を対象とした有償の書評サービスを始めた。BookLifeという自主出版支援サイトの上で、PWの書評専門ライターがPW誌とは別個に記事を担当するもので、著者がポケットマネー(?)で依頼する形をとる。書評出版物が有償で書評を行うことは、これまでになかったことだった。
創業150年の書評誌がインディーズのための書評サービス
それというのも(後述するように)PWの"Reviews" はその「予見」の確かさの故に1940年代以降の米国出版界で「権威」としての響きがあり、その"Forecasts." は数多くの名著、ベストセラーを紹介し、書店や図書館、教養人に大きな影響力を持った。推薦書が売れたからだ。当然にも出版社は広告出稿を競い、ともに繁栄した。しかし、20世紀の繁栄はそのままは続かない。本も雑誌も、紙のメディアはほぼ同じ速度で成長力を失い、代替メディアの登場とともに衰退を始める。PWは出版の運命に敏感で、アマゾンとKindle、自主出版の登場の意味を認識していた。
BookLifeをスタートさせたのは2014年で、これは2010年にPWが長い混乱を経て、PWxyz, LLC.を構成する現経営陣(ジョージ・スロヴィクCEOとジム・ミリオット編集長)の手に渡ってからの新方針の下で進められている。PWは、2011年から、その名も "Beyond the Book: PW's Week Ahead"というポッドキャストを提供しており、関係者の注目を集めている。
Publishers Weeklyが満を持した「1本300語400ドル」
PWによれば、BookLife Reviewsは、300語(Publishers Weeklyは200-250語)のレビューを、出版社、図書館より一般読者に向けて発信する。著者は、書評原稿を事前に読んで、BookLife版とPublishers Weekly印刷版の原稿を選ぶことが出来る。査読期間は4-6週間で、出版される原稿は、「読者・一般書評」(reader review)ではなくPublishers Weeklyによる「出版・専門書評」(trade review)として扱われることが保障される。PWの書評とは区別されるが、PWが書いたBookLifeの書評であるということだ。
価格は399ドル(ワード当たり1.3ドル)。また149ドルを追加すると PW Selectとしてホームページやニューズレター、SNSを通じたプロモーション・サービスを利用できる。このあたりの価格が著者にとってどの位よい買い物であるか、あるいはPWの読者や書店関係者にとっても書評価値もあるかは、多いに期待する価値があると思われる。なお、PWによればライターはこれまで通り、PWに無料で書評用原稿を応募することも出来るので、内容によってPWが無償での書評に取上げることもある。PWはBookLife Reviewsによって伝統ある書評誌のイメージを損いたくないようだ。◆ (鎌田、11/05/2019)
関連/参考記事
- 書評が市場を動かす(1):21世紀, 本誌2019/11/7
- Publishers Weekly’s BookLife launches paid reviews for self-publishing authors, by Mark Williams, The New Publishing Standard (TNPS), 10/29/2019