Kindleが2013年に中国にデビューして5年以上経過したが、Good eReader (12/08)は、2020年以降もこの動きの激しい市場で、アマゾンKindleのビジネスモデルがリードを保っていく見通しに疑問を呈している。スマートフォンで出発したWebコンテンツ市場が、21世紀の中国ではKindleをも抜いてしまうのかも知れない。
スマートフォンがモバイル市場を席捲、視界不良に
コズロウスキ氏はKindleがE-Inkデバイスの中国市場でトップを走っていることは疑っていないが、E-Book市場では疑わしく、オンライン読書で優位にあるとは考えていない。中国のモバイル環境は2011年頃からスマートフォンが増加し、2013年には他を圧倒する勢いとなった。つまり、ケータイからスマートフォンへという「進化」を、中国のネット世代(いわゆる網民=ワンミン)はスマートフォンで受け止め、始めてしまったことになる。これが出版に影響しないわけはない。
「かつて」本は、販売/消費の単位で市場として分かり易かったが、Webの中に吸収されて以来、書店の外では販売も読書も、「プラットフォーマー」以外には見えなくなった。中国の出版統計は、2015年を境に印刷本の成長が止まり、オンライン(Web)への傾斜を始めてから(オンライン出版物が登場して)見えにくくなった。中国のKindleも2016年以降、同社にとっての大市場となったはずだが、二桁成長を続けているとは言うものの、比較可能な数字ではない。
中国のE-Book販売のルールは、最初の1章分は無料で読め、読者は章単位で購入可能、著者はしばしば反応を見てストーリーを変えることもある、といった具合だ。こうしたルールに適応するためにChina MobileのMiguプラットフォームを利用しているが、アマゾンには止むを得ない(有難くない)提携だろう。Kindleでは12万点の中国語タイトルが提供され、2018年からはPrime Readingも提供している。
コマースの海に浮かんだアマゾン・モデル
しかし、アマゾンにとって中国市場は必ずしも居心地の良いところではない。コマース系のライバルはアリババ系の天猫 (T-mall) や淘宝网 (タオバオ)で、消費者とより近いところにいる。E-Bookと印刷本に関しては、アマゾンのビジネスモデルは十分に機能しているはずだが、ライバルはコマースにより近いWebコンテンツで、広告を含めた「より自由」なWebビジネス環境を享受している。
アマゾンの創業時は、本と一般商品、E-BookをまとめてWebで扱うことが「イノベーション」であったのだが、中国は非書籍系コンテンツまでをまとめた。コンテンツを「通信」として扱うことは、伝統的な「新聞・出版」を一括管理する発想から見れば大転換であり、アリババなどに飛躍の機会を与えた。新体制の下で、出版は広告という巨大民生産業とのつながりも得た。
新体制の結果、「出版」はWebとビデオ/映画産業との関連で市場を持つことになる。このコンテンツ融合、チャネル融合(販売・広告)によってクリエイティブとコマースにどういう変化が生まれるか、それがアジア、世界の関連産業をどう巻き込むかが注目される。重要なことは、中国はもはや世界第二(成長力ならトップ)の大国であり、成長力を失った旧先進国よりも大胆なビジネスモデルを打ち出せるという状態にあるということだ。◆ (鎌田、12/11/2019)