E-Book自主出版の父というべきマーク・コーカー氏が新しいツール Smashwords Presales (SP)を発表した。これはコンテンツを特許出願対象 (Pat. Pending)としてE-Bookのプリセールスに利用するものだ。これはE-Book/自主出版市場のミクロな性格に合わせた、興味深いアイデアといえる。
創業以来の「スマッシュ」となるか?
予約注文 (pre-order)はよくある販売方法ではよく使われる。Presalesというのは公式販売(通常販売)が開始される直前の販売を意味するらしい。Smashwordsはこの(おそらく)わずかな期間を著者/出版者が利益機会とするために、簡単なテクノロジーと特許法を利用しようと考えた。前提となるのは以下のことだろう。
- アマゾンの KDP Selectの独占契約でSmashwordsは多くの顧客を失った。
- 自主出版の著者は固定読者/シリーズを有している人が少なくない。
- 多くは(たぶん)新刊1-2日以内に販売される。
- アマゾンなどのオンライン・リテイラーはそうした著者、読者を集めている。
- 米国の特許法では 'Presale order' がクリエイターに認められている。
これはE-Bookの公刊以前に、創作物を著者/出版社が読者に出願技術として販売するプログラムをつくれるようにするもので、著者=読者の関係が直接の接触(メール)で生まれる以前に(アマゾンのような)オンライン販売者に侵食されることを阻止するものと考えられている。出版におけるアマゾンの最大の武器が著者=読者に割って入るマーケティング機能であるとすれば、これが正攻法な対抗手段となるだろう。
「初売り」の価値
コーカーは、最初に著者(つまり誰よりも読者を必要とする存在)に出版プラットフォームを構築し、読者とのアクセスを提供した(最も著者に近い)存在である。しかし、アマゾンが KDP Selectを提供し、Kindle Unlimitedなどのプラットフォームを増強するに至って、ほとんど勝負がついてしまった。この人の偉いところは、「自主出版」の大義を捨てず、諦めないところだ。今回はビル・ケンドリックCTOと共同で、意外にも「特許法」を組込んだアイデアで、アマゾンのバキュームクリーナーから重要な顧客(のメールアドレス)を守ろうとしたものだ。プリセールスには顧客のメールアドレスを転用しないという契約が含まれており、プリセールスのE-Bookを定価あるいは割引価格を提供する。
コーカーはこの「プライバシー契約」でKDP Selectへの利用が抑えられると考えている。効果のほどは分からないが、期間が1日~3日にしても効果はあると考えている。Presalesオプションの取消しは任意で可能だからだ。彼によればこのアイデアは最も「大胆かつ野心的な」ものだという。この転用禁止条項はクリエイターにとって汎用的なものとなるからだ。彼はPresalesを特許化し、コマースのサプライチェーンで商品化しようとも考えている。それによって著者/出版者がオンライン・リテイラーに無断利用された一部を取戻せたら、というのが彼の夢のようだ。◆ (鎌田、12/12/2019)
参考記事
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Smashwords Launches Presales Option, By Jim Milliot, Publishers Weekly,12/03/2019