
2020 OpenBook ‘Reading X’ というイベントが北京で年明け早々に開催された。オンラインが小売の7割を占める市場では、コンテンツからチャネル、マーケティングまですべてをデジタルで開拓しなければならない。今後のテーマは当然にも、AIや5Gなどを使った出版が中心になるだろう。紙の出版と書店は、国家の支援の対象となる。
書店シェア3割となった「デジタルファースト」の大国
2019年の出版市場は14%拡大し、ついに1兆元を超えた(1兆22億7,000万元≒16兆円、150億米ドル)。8,000億元を超えたのが2017年なので、1年で1兆元というペースだったことになる。日本市場の10倍の市場が生まれた。米国と中国の業界をつなぐサービスを提供している OpenBookは、中国市場の動向を以下のようにまとめている。(データはPublishing Perspectives (01/17)の記事による)
紙の書店が前年比で4.24%の売上減となった。新刊が-6.7%で19万4,000冊に落ちたことと価格引上げが影響している。新刊は、2012年までは年連続で上昇を続けたが、2012年をピークに頭打ちとなり2016年まで一進一退を続け、2017年からは僅から徐々に後退を始めている。しかし、20%台の成長を10年続けたオンラインとほとんど3,500億元に停止した状態の書店は、2017年には明確に逆転し、挽回不可能となった。そして19年の数字は、政府の書店支援策を得てさえシェアは30%を割り、出版の成長を押し止めない限り、20%に近づく可能性が強い。10年前には、「最後の印刷本の王国」となるかと思われていたことを想い出す。
OpenBookによれば、印刷本価格の上昇は、主として印刷製本品質の向上へのニーズが高まったこと、輸入本の増加、輸出市場への関心などによるものとされる。1999年から2019年まで20年間の新刊価格の中央値は、15元あまりから45元(6.56米ドル)を超えるところまで、3倍にも上昇した。たしかに、紙の本は高級化が目立っている。これは明らかにE-Bookを既定値とし、独自の価値を印刷本に求める段階に入ったことを示している。それは60%にも達するE-Bookのディスカウント販売にも表れている。これは完全に売上(金額)を重視した市場指向的な価格戦略で、米国で2012-13年の「自由市場期間」に行われたことがあるが、E-Bookが短期間で30%台後半に達したので、逆に紙に近い水準にまで引き上げた経緯がある。
中国のディスカウントは、自己啓発本などベストセラーを多く生み出す分野の割引率と比べて、学術書や児童書は40~50%(最大で印刷本の半額)、自然科学、伝記、語学などは30~40%と差がつけられている。書店のシェアはほぼ5年で50%から30%にまで下がり、出版社の経営もオンライン/デジタルを重視したものとなっている。◆ (鎌田、01/27/2020)