スウェーデンのデジタル・コンテンツサービス企業 Nextory は3月25日、「デジタル∔サブスク」という最近最も注目されているモデルで事業拡大を進めるべく新たにSEK 6000万クローネ(600万ドル)を調達した。同様な事例ではStorytel が前月に10億ドルを調達したばかりで、コンテンツ市場の活況が続いていることを示している。
定額モデルで金鉱を発見したバイキング
Nextoryは2015年に立ち上げたスタートアップで、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ドイツ、オーストリア、スイスの6ヵ国で地盤を築いている。定額の加入率は昨年3月と2倍に上がっており、同社がとくにスウェーデンとフィンランドでの採算性と成長率に自信を深めていることは確かだろう。しかし、国ごとに採算性は異なり、スウェーデンの同社としては単純な拡大には慎重だ。
デジタルコンテンツの定額サービスの成否は、平均的に高い読書率、読書習慣に依存し、販売市場の価格傾向との安定的相関をつかむ必要がある。北欧企業が文字読書/音声読書の両立などで定額需要拡大をみたことは、成長の法則性をつかみかけているものも思われる。どはいえ、アマゾンでさえAudibleのジャンルフィクションでの定額には手を焼いたことでも示されたように、コアな読者層は経済意識が高く、データ・マーケティングの粘り強い分析力が必要とされる。北欧人はそうした緻密さと合理性を特徴としており、数学や物理学の応用に秀でたソフトウェア技術者も多い。彼らの中から、世界的な収益モデルが生まれたとしてもなんの不思議もないのだ。
数年前のことだが、米国の大手出版社のトップは「販売市場こそ読者が望むもので、定額など試行することもあり得ない」と表明していた。おそらくこうした姿勢は、数学を嫌がらない、新しいタイプの経営者によって刷新されるだろう。◆ (鎌田、04/02/2020)