ベストセラー作家のジェームズ・パタースンがオーディオブックの新作をAudibleと契約した。俳優のアーロン・ポール、女優のクリステン・リッター、ナターリー・エマニュエルの3人を起用した大型サスペンス “The Coldest Case: A Black Book Drama” は、シカゴの麻薬組織をめぐるフィクションである。
オーディオで「eSports」を表現する大作家
オーナーのeSportsゲームに絡むのが一つの見どころ。「視覚性」の強いゲームに、「オーディオ」コンテンツとしたのは、パタースンの意図が音声にフォーカスすることにあり、効果を確信していることを示している。新しい「ゲーム」をドラマで使いこなすのは難しく、あえて映像に頼らない試みに注目が集まるだろう。複数の俳優を必要とした成果にも期待したい。
Webの可能性は、表現における実験性にあり、ほとんどのジャンルを成功させてきたパタースンの今回の挑戦は、「eSports」というスポーツと「ラジオドラマ」にあったようだ。作家の数々の実績は、こうした挑戦に説得力を与えている。
筆者が気になるのは、読者と出版を愛し、これまで「紙の本」と「街の書店」を重視してきた「大メディア作家」の関心が、在来出版に関連した企画から離れてきたように感じられることだ。書店よりは読者へのアクセスを優先する気になっているのか、在来出版の救援よりオンライン/オーディオ出版に強い関心が向けられている。◆ (鎌田、07/07/2020)