コロナ禍が多くの書店ビジネスに影響を与えたのも関わらず、Amazon/Books の開設のテンポは落ちていない。それは、当初は反撥もあった反応が歓迎に変わるなど環境が改善したこと、データ指向の向上やサービスの拡張などを反映したものと見られている。システムとしてのBooksは進化するのである。
パンデミックに対応するシステム
20世紀以降の大衆社会が「パンデミック」を経験したのは、今回が初めてだった可能性ある。そもそも「大衆社会」が一般に広がったのはこの半世紀より前のことではない。出版社は、書籍ビジネスがただの産業というだけでなく、複雑・巨大な社会システムにおけるプロセスであることとその意味を知らなかった。「進化」していたはずの社会は、そのために予想が出来なかった。(写真は改装後のB&Nマナッサス店)
アマゾンの場合、ロジスティクスは一部を除いて影響を受けなかったし、オンライン書店は活動を続けた。何よりも重要なことは、ロックダウンによるダメージをアクティブにコントロールする体制を持っていたことだ。伝統的なシステムは、規模と多重性によって強靭であると言えるが、想定しない事態に対しては「システム崩壊」に対処できない。
システムの機能保証はベンダーの責任
アマゾンの小売システムは、顧客(体験)をフォローするサービスの延長上に、クラウド、モバイル、ローカル (Brick & Mortar) のコンビネーションがサービスおよび機能として発揮するパフォーマンスによる。つまりアマゾンのストアとサービスは、クラウドストアやリアルな店舗などが、独立したものとして完結するのではなく、最初から総合した顧客体験の「最大化」に設定されている。在来の書店との違いは、そのシステムだ。
顧客が店に行ったのに、閉店していて何も得られなかった…あるいはもとめる本が品切れだったとすれば、それで終ってしまう。いや、企業としても顧客の期待を失うだけの問題ではなかった可能性がある。アマゾンはそう考えるだろう。そうした想像力は、顧客のマインドを読み取るスタッフの発想から生まれ、失われた「何か」をデザインし、代償以上の体験として具体化し、別の商品やサービスとして企画・提案・提供するプロセスとして意味を持っていくだろう。
「オルタナティブ」を保障するシステムとは、複雑で強力なものではない。そうしたものはコスト/効果の点で持続性が低くなる。◆ (鎌田、07/10/2020)