スウェーデンのデジタル出版社Storytel は、第2四半期の売上が前年同期比43%増で5,000万ドルあまり。会員数1.25万人となったことを明らかにした。北欧市場を中心としたものだが、拡大ペースは落ちることなく、着実に実収入を増やしている。そしてアジアでは、タイとインドネシアへの進出を発表した。
サブスクのアジア進出は可能か?
Storytelは、在来チャネルに依存しない(素通りする)デジタルでの出版市場拡大を目標とし、必然的に定額モデルによるE-Bookとオーディオをベースとして短期拡大を実現してきた。アマゾンを凌ぐ、最もWeb的な出版モデルと言えるだろう。このモデルは、会員からの定額収入と版権者への支払のバランス(適正配分)によって維持されるが、最近のBookbeatの実績は、維持可能な水準がデータ指向マーケティングで調整が可能と思わせるものがある。つまり、Kindle Unlimitedに続く、定額モデルの商業性の実証だ。
出版における定額制が(1世紀以上の歴史に関わらず)、敗戦後のドイツなど例外を除いて定着してこなかったのは、出版と印刷本と書店での個別販売以外のビジネスを困難にしてきたからだ。逆に言えば、データがデジタルであれば、あらゆる販売方法も可能になる。
グーテンベルク出版が経済的合理性を失い維持困難になってから、すべてが変わり始めたのは、在来出版(版元、書店、流通)にとって、紙を離れることでビジネスが自由になったからだ。伝統ある欧州の出版社が、印刷本の単品販売以外に目もくれない心情はよくわかる。なにより販売成功を生きがいとしてきた人々がいるのだ。しかし、市場の未来は、これから教育を受ける若い世代にかかっているとすれば、事業的には選択の余地は少ない。→(2)へ続く。