米国ではオーディオブックに比べてE-Bookの低調が続いていたが、5月に入ってようやく加速してきたようだ。書店関係者には申し訳ないが、本の穴はすぐに別の本で、現在の読者に読んでもらわなければ埋められない。それには、別のタイトルよりはE-Bookがよいだろう。デジタルはその役割を果たしている。市場は動いているからだ。
レガシー産業のレガシーは無力
産業と社会を同期させる仕組みとしての出版は、20世紀までのコミュニケーションの波乱をしのいできた。しかし、すべてを同期させたWeb、そして米国だけは逃れようなかった。出版では中心は機能せず、そして市場がローカルに分かれてきたメディアもグローバルの例外ではなかった。Web自体が「パンデミック」だからである。
書店と出版はほとんど停止し、オンラインのみが機能する中で「市場」では何が起きているか?しかし、2020年はこれまでの出版の延長では始まらないことは知られていた。5年あまり続いた非市場的(つまり在来出版優先)政策は、出版、流通、販売で当事者を疲弊させ、それぞれが限界にきていたからだ。その点でいえば、コロナ禍はただ、転換を不可避として納得させるものとなったと思われる。
「オーディオ」は強かった
他方で、オーディオブックの売上は5月も前年同月比で20%を超え、5,429万ドルに達した。5ヵ月の合計は2.6億ドルで、紙の本と比肩できる規模に近づいている。児童書は伸びが50%を超えていることも、このフォーマットの見通しを明るくしている。
紙の本は、コロナ禍で大きな打撃を受けた。商業出版ハードカバーの売上が18.5%減の2.12億ドル。ペーパーバックは16.9%減の2.01億ドル。年初からの数字ではハードバックが6.7%減の9.679億ドル。ペーパーバックは3%減の9.245億ドル。かつては廉価本で重要な位置を占めた量販版は、減少幅は落ち着いたものの、年初からで1.2%減の8,390億ドルだった。詳細は、AAPの数字で別に検討してみたいが、流通の混乱を反映して、一部で得られた「紙の健闘」は糠喜びだったようだ。 →(2)へつづく ◆ (鎌田、07/15/2020)