Koboは本拠地のカナダで月額9.99加ドルの定額サービスの提供を開始し、対象を数十万冊に拡大して会員と読書量を拡大している。方向転換するにはよいタイミングではないだろうが、ステークホルダーの納得を得るには数少ないチャンスだろう。そしてカナダのユーザーはサブスクを支持したようだ。
旧E-Bookビジネスからの転換
Koboは、E-Bookサービスとしては旧いビジネスに属する。これまでにKindleの後をフォローするため、各国語をサポートするe-Reader、自主出版、オーディオブックと戦線はますます拡大した。事業としての採算性は苦しくなる一方だろう。他方で、サブスクは音声読書と同様に現在のトレンドである。過去の事業を整理して絞りこむには現実的な選択といえる。ちなみに、もしKindleが初期モデルのままコロナ禍に巻き込まれていれば、一転して苦境に陥っていた可能性は十分にある。
Koboは、フランスでの事業 (Kobo Plus)を新体制で始めたと言われる。つまり、グローバルなブック・ストリーミング、サブスク・サービスを再構築することで、対象地域は欧州を除いても、日本、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、ブラジル、南アフリカなどかなりの数に及ぶ。しかし、もしWattpadのように市場として機能したとすれば、コマースを含む投資家にとって魅力はある。
サブスク・プラットフォームの価値
伝統的ブック・ビジネスから見て、方向転換を迫られ、サブスク・プラットフォームに賭けるKoboに価値はないように思える。カナダでなければとうに投げていたかも知れない。しかし、もしこれでの実績から、小保のビジネスがユーザーを確保していたならば、サブスクとしての再生は可能であると考える。ブックビジネスは、(1) サブスク・サービスとして、(2) グローバルな規模で、(3) 出版、教育、コマースを組込んだビジネスモデルとして再構築されるからであり、こうした方向へ向けて、資本、テクノロジー、人材は何度でも集まるからだ。
「サブスク・プラットフォーム」はWebによって生まれ、アマゾンによって「出版」の可能性が実証され、まだ底を見せていない。リトライに必要なものは、コアビジネスとユーザーである。 ◆ (鎌田、09/25/2020)