今年のFrankfurt Book Fair (FBF2020)は、10月第3週バーチャルで開催され、様々な規模のイベントに総計約20万人が参加したと発表されている。この種のバーチャル・イベントの形式は、急速に開発が進んでおり、VRや360度動画なども豊富で、プレゼンテーション開発、効果測定も進んでいる。ドキュメントも含めて、情報が充実したのは流石と言える。
世界最大の「三密」イベントの「バーチャル化」
「20万人イベント」成功させたユルゲン・ボース会長は、「この半年、スクリーンの後ろでのミーティングに慣らされてきたが、顔を合わせる「フェア」に優るものはない」と語り、来年の再開を誓っていた。
ブックフェアの「時間密度」は、独特の(圧倒的な)インパクトがある。しかし、今年の情報量と整理は貴重なもので、例年の世界の「出版界」を背景とした、雑然とした「重み」と比べた遜色は、比較の対象ではない。とくに初めて「バーチャル」を体験したわれわれは、醒めた頭でトピックやテーマを確認すべきだろう。
FBFによれば、今年の統計は、プラットフォームに登録した参加エージェントは4,165名で、31,100点の書籍がアップロードされ、2,388名がマッチメイキング・ツールを利用して活動を行った。連日700~800名が「見本市」を利用したという。今回は、例年大規模なブースで出展する大出版社は参加を見合わせたが、かなりは埋合わせられたと思われる(詳細は近く発表予定)。
北京のフェアはバーチャル化で先行しており、来年は「5G」「AI」を活用し、FBFでも大規模なイベントと買付を行ことになると見られる。
バーチャル/リアルの共存は世界的に前進
FBF2020の最大の意義は、見本市(フェア)機能の根幹である書籍/版権取引(マッチメイク)をバーチャルで機能させたことにある。これは関係者の緊密な協力と事前のシミュレーションで可能になったことで、実質半年で成功させたことは驚異的といえる。逆に言えば、短期間、短時間での「三密」を緩和し、物理的フェアの運営も改善されることになるだろう。
バーチャル体験の成功が関係者に共有されたことで、伝統的に物理的限界を追求し、それによって「劇的満足」を共有してきたイベントの開催は、よりリラックスしたものとなることは確実である。欧州のコロナの波が続く中、可能な限りバーチャル化して、犠牲を最小化しつつ「見本市」という世界的機能を守ったことは高く評価される。
21世紀に入って、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを含め、出版のグローバル化が進展していた中で起きたコロナ禍は、出版界に大きな試練を与えた。途上国ではサブスク/E-Book市場が相対的に速いスピードで成長しており、米国と欧州の旧先進国が停滞すれば、市場機会を失うことになっていただろう。そうした意味でも今年のFBFの意義は大きい。◆ (鎌田、10/22/2020)
参考記事
- Overall Frankfurter Buchmesse Digital Attendance: 200,000 Users, by Porter Anderson, Publishing Perspectives, October 19, 2020