米国で書籍展示ビジネスを行っていたリード社 (BookExpoAmerica: BEA)が、今年でBEA事業を解体すると明らかにした。出版社と地方書店をつなぐ機能を果たしつつ、著者と読書ファンの交流の場として続くと思われていた。BEAは出版の中心がニューヨークであった時代の名残りだったが、そうした「遺跡」は思い出とともに記録となった。
ブックイベントは2022年以降か
残念なことに、BookExpoAmerica以下のイベント群、NY ComicCon、BookExpo、BookCon、UnBoundは、いったんすべて解消された。NY ComicConなどは、米国-世界のコミックファンのお祭りだった。これも復活してほしいものだ。米国人のエンタテイメントとイベントの才能は、「最高」を思わせるものがある。「デジタル」時代のイベントを見た記憶がないのは残念だ。(写真は最後となった2018年の会場)。
米国が「出版の中心」であった時代を筆者はよく覚えている。ITイベントとともに筆者の米国体験のひとつだが、トランプ氏が、ベストセラー「著者」としてゴーストライター本をせっせと売っていた頃のことだ。
今年のサイモン&シュスター社 (親会社Viacom-CBS)は、各種の「トランプ暴露本」で儲けたそうだが、最後に会社をペンギンランダムハウス (Penguin Random House: PRH) に売って「売り収め」をしたことになる。この会社は、「メディア-ジャーナリズム時代」の出版社として時代を終わった。ブランドは継承されるようだが、出版傾向はどう変わるだろうか。
「ブック」はメディアをどう再建するか
BEAのようなイベントは、広大な市場で、出版社と取次と書店を繋ぐ必要があった時代の存在だ。著者と出版社を繋ぐ版権代理人が活躍した時代でもある。ほとんどが東京に集中した日本とはわけが違う。「ミドルマン」が大きな存在だったとも言える。
「出版の中心」が必要としていた「ブックエキスポ」は、業界人だけはなく、愛書家にとって楽しい時間だった。とにかく、顔を合わせて `Book People' と話が出来れば、何日かいい気分になれる、そんなイベントだったと思う。
再び時が来れば、ブックイベントも戻るだろう。その時は「本」「コミック」「マンガ」だけでなく、「オーディオブック」やアニメーション、ヒーローやキャラクターを世界から集めて祝祭的雰囲気に溢れたものになるだろう。もちろん、それは人種や差別を超え、愉しめるものとなるはずだ。
◆ (鎌田、12/03/2020)
参考記事
- Publishers Would Back a Reinvented BookExpo, By Jim Milliot, with reporting by Alex Green, Claire Kirch, and Ed Nawotka、Publishers weekly, 12/02/2020
- Reed Expo Closes the Book on BookExpoAmerica, By Nate Hoffelder, The Digital Reader, 12/02/2020