「ストーリー」を世界的創作ジャンルに育てたトロントのWattpad社は、どこまでもそのストーリーを続けている。本とスクリーンを2つの軸に、世界の都市とスタジオを無数の舞台として展開する 'Watty' には限界というものがないようだ。Publishing Perspectives (12/04)のポーター・アンダーソン氏は、最近のオランダでの映画プロジェクトを伝えている。
イスラミック・ラブストーリーを開拓
このプロジェクトは、アムステルダムを本拠に活躍する作家サミィア・ハフサヌィ (Samya Hafsaoui) 、NL Film、Wattpad Studiosが制作しているもので、ムスリムの男女たちのラブストーリーを描いている。若者の生活空間は拡大しており、かつては考えられない「ストーリー」と出会う。それぞれの家族、自由・信仰・価値観と選択といった個々の問題が、「等身大」の登場人物で描かれるわけだ。「ムスリムの恋」というテーマは、本と映画の両方で100万人を超えるオーディエンスを獲得している。
以前は、彼らのような主人公や状況は、多数の読者の獲得が難しかった。Wattpadは、著者とスタジオがあり、表現手段へのアクセスも持っている。同社はアイヴァン・ユエンとアレン・ラウの2006年の創業で、出版に限らず、「若者」と「ストーリー」という2つの「どこにでもあるもの」から出発し、世界のどこでも市場とビジネスに不自由はしないことを発見したことになる。最近では、第三世界の「都市」とクリエイターのネットワークから、創造的環境を発見することができている。人口が多い第三世界型のドラマで、人間のリアリティがあるので、多くのオーディエンスを獲得できる。
第三世界型ストーリー/ビジネスをモデル化
Wattpadとしては、同プロジェクトは最も完成されたビジネスモデルをつかんだものとなる。逆に出版社としては、Wattpadモデルを取り入れて、より「本格的」な構成でビジネスにもつながるフィクションを狙うことも出来る。言語フィクションの領域は無限だが、それは「人間」が才能無限であることに依存する。そろそろ、日本もクリエイターを発掘・発見すべき時だろう。◆ (鎌田、12/10/2020)