米国の出版大手ハーパーコリンズ社は3月29日、ボストンの老舗出版社ホートン・ミフリン・ハーコート(HMH)社の一般書部門を3億4,900万ドルで購入することで合意した。これにより、フィリップ・ロスら著名作家の古典名作の版権を売却して債務を償却する一方、定評ある教育図書におけるデジタル戦略に集中することが可能になると見られている。転換ができることはすばらしい。
オーディオで復活:「素晴らしいアメリカ出版」
「品質」で知られるが商売は下手なHMHのリニューアルは、かねて話題になってきたことではあるが、商売のコリンズに高いブランドを渡して「未来」を選択したのはよいことだろう。「未来」を試すことで真価と可能性が開拓される。筆者から見て、米国の教育出版のポテンシャルは(問題とともに)大きなものがあり、期待できる。ただし、最大市場の中国、インドに強い英国やドイツと比べると「科学」と「国際」に魅力が乏しい。米国の支柱の一つ「ボストンの科学」を生かせていないのではないかと思ってしまう。
1832年創業、米国の「名門」出版社という存在は当然のことながら、学芸都市を背景にした「普通」の出版ではない。「名門」の可能性は大きい。アマゾンやディズニー、テクノロジー・ブランドを始めとして「体制」を作りやすいと見られるからである。HMHの人気キャラクターは、主に児童・教育放送で知られている。オールド・ファンにはなじみがないだろうが、最近のHMH Books&Mediaは「オーディオブック」で成功させ、付加価値を高めている。版権切れが続く古典が、ハーパーに良い値で売れるのも、児童書からオーディオまでの平均的期待値が高いということだ。→(2)へ続く。
コメントを残す