Web出版に特別な仕掛けとして、書店や展示台、販売員の代わりに「プラットフォーム」がある。文字通り「飛び出る」仕掛けで、これまでメディア・ビジネスを大きく変えてきた。
特に中国のTikTokは、驚異的な速度でアクセスを稼ぎ、「ショート・メディア」で無敵を誇っていた(元)米国大統領に脅威に与えたことは記憶に新しい。では、同様のことを「本」や出版の販売で考えられないだろうか? じつは、「BookTok」というサービスがすでに米国で登場し、出版社や書店を動かしているようだ。
Web #BookTokが本の波を起こす
中国発(初)のTikTokは、短い動画を作成、共有、発見するためのソーシャルメディア・プラットフォームである。映像、音楽、ダンス、それにメッセージを効果的に組み合わせると「ソーシャル」「体験」となるが、それが米国大統領選挙を動かし、米中紛争を左右したことは、周知の通りだ。重要なことは、技術的な仕掛けではなく、メディア・ミックスの効果によって、実際には何かを「体験」させてしまったと言えることだろう。
この「体験」は、今後さらに(中国はもちろん)米国で分析・研究・開発されていくと思われる。筆者の注目は、Webでのダンス音楽という、韓流ポップス「江南スタイル」(2012)の世界的ヒットで注目されたグローバルなデザインである。これらの要素を、(言葉・文字・詩・構造のように)もともと関連の深い要素として再構成し、あるいはメッセージに合成することだ。プラットフォームとビジネスモデルは、出版への応用に巨大なポテンシャルが見込まれる。
音・楽・詩・歌・舞・伎の多重化の可能性
すでにこのアプリは、歌、ダンス、コメディ、リップシンクを通じて自分自身を表現するための手段として若者に使われれており、ユーザーは動画を作成してコミュニティ全体で共有できる。
BookTokの仕組みは簡単で、ハッシュタグ#BookTokを使用して、本を推薦する1分間のビデオを作成する。販促効果は明瞭で、すでにNPD GroupのBookscan統計やBarnes & Noble書店のデータで膨大な数が測定されている。近い将来には、出版社や書店のチャートにも登場するだろう。
若い世代はすでに、本を読むだけでなく、聴く読書を知っている。もちろんそのことで書く能力も啓発されているだろう。この世代のメディア感性は、「音・楽・詩・歌・舞・伎」の面でも芸術的創造性が高まる。かつて出版の世界でも起きたことだ。メディア・プラットフォームによる産業の進歩は、第4次次産業革命を、AIの応用によって複製ビジネスの世界にもたらすと考えられる。◆ (鎌田、05/07/2021)
参照記事
- The Rise of BookTok on TikTok, By Michael Kozlowski, Good eReader, 05/04/ 2021
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How Crying on TikTok Sells Books, The New York Times. /03/20/2021