EDITORIAL
「デジタル的利用許諾契約」の基本問題(2) (♥)
[EDITORIAL] 前回の問題提起に続いて、何が問題になっているかを考える。デジタルコンテンツは印刷刊行物の改版と本質的に異なる性質を持っている。それは(1)再編集や更新が容易で、(2)版元のリスクがなく、(3)マーケティングの可能性が大きいということだ。デジタル版には店頭から消えるまで売れるのを待つしかないという制約がない、組合せを変えることも、オンデマンド印刷もできる。そうした多くの可能性への対応を、例示されている契約書案は触れていない。デジタルコンテンツに関して、出版社はメーカーとしてではなく、具体的なスキルとパフォーマンスを持ったサービス・エージェントとして対応するしかないと思われる。[全文=♥会員]
「デジタル的利用許諾契約」の基本問題(1)
[EDITORIAL] 出版社による電子書籍出版が大規模に行われるには、電子版著作権に関する新規契約が必要になる。そこで権利許諾期間や版権料といった項目について、出版社の提案をそのまま著者が受諾するか、交渉が行われるか、あるいは著者が別の道を選ぶかすることになる。しかし、問題はほんとうに期間や(紙と比べた)版権料だけなのであろうか。むしろこれらは、コンテンツの価値と可能性を最大化する<サービス>の問題の一部として検討されるべきではないか、とわれわれは考える。まず、問題提起から。
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ANALYSIS & COLUMN
RIM PlayBookは500ドル以下で1Qに発売
iPadをターゲットとする新興タブレット製品の価格は、ほぼ$500(約4万円)を切るものとなりそうだ。Business Weekの11月10日付が伝えるところでは、PlayBookの記者発表で注目を集めたRIMも、2011年1Qに北米で「500ドル以下」で発売する意向を表明した。Samsung、HP、Mororola、Dellなども、小売価格で$499をどこまで下回るかが勝負と考えられている(Samsungの米国価格は、3G契約なしで$599と発表された)。[続きを読む]
読者とコンテンツがE-Book市場を牽引 (♥)
Forrester Researchは11月5日、E-Book市場についての報告書を発表した。米国市場の中期(5年間)予測を示し、Kindle登場以来3年間の急成長がどのように持続されるかを検討している。「E-Book購入は持続的に上昇」と題したこのレポート($499)は、米国人の7%がE-Bookを購入していると推定。その市場は2010年に10億ドルの大台に近づき(9.66億ドル)、2015年に3倍の28億ドル規模に達すると予測している。新たに8%が購入意向を示し、購入者はさらに読書量を増やすことが分かっているからだ。[全文=♥会員]
NEWS & COMMENTS
市場に出るカラー電子ペーパーの課題
FPD International 2010ではカラー電子ペーパー採用のE-Readerが多数登場し、話題となった。めずらしく海外メディアも取材しており、この市場で影が薄い日本メーカーも存在感を示している。しかし、商品化の先頭はやはり中国メーカーで、Hanvon Technology (漢王科技)がE-Ink社のTriton Imaging Filmを使った9.68インチ製品を展示。課題とされている表現力とレスポンスをデモしていた。Hanvonは来年1Q~2Qに500ドル以下で世界発売するとしている。しかし、市場でシェアを確保するには最適なコンテンツを見つけなければならない。[続きを読む]
E-Bookは上昇し米国出版社は同時発売を決断
米国AAPは11月10日、9月期の書籍売上情報を発表した。E-Book市場が前年同期比158%増の3,990万ドルだったものの、成年向けハードカバーが40%ダウンの1.8憶ドルに止まったことなどから、全体として12.1%減の11億ドルとなった。3Qまでの合計で前年と比較すると、ハードカバーが15.1%、ペーパーバックが6.8%減少している。[続きを読む]
2011もCESの注目はタブレットとE-Reader
2010年のCES(日本語)は、E-Book/E-Readerが社会的な関心を集めるきっかけとなった記念すべきイベントだった。その1月のCESを前にした11月9日にニューヨークで開かれた記者発表で、主催者の米国Consumer Electronics Associationは、チーフエコノミストが注目すべき調査結果を発表した。家電・ガジェットの最大の商戦が開始されようとするタイミングに合わせたものだが、TeleReadがE-Bookに関連する部分を要約しているので紹介しておきたい。[続きを読む]
E-Bookと検閲:アマゾンの回答
リアルの書店と同じく、オンライン書店にとって何を扱い、何を扱わないかはかなり大きな問題といえる。アップルは、ジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』やインドの古典『カーマ・スートラ』に対する過剰な検閲で問題となった(日本の写真集にも「発禁」の憂き目をみたものがかなりある)。他方で過少な検閲で問題になっているのがアマゾンだ。同社の自主出版支援サービス(DTP)を利用して出版された本の中には、ポルノグラフィに近いものや性倒錯嗜好を扱ったものがあり、Twitterやブログなどで攻撃されている。アマゾンはガイドラインを公表しているが、「××的」といった形容詞や副詞でしか表現できない対象の扱いでは問題を生じる。[続きを読む]
アマゾンが新聞・雑誌サポートを強化
アマゾンは11月8日の発表で、Kindle Storeを利用する新聞・雑誌へのロイヤルティ・レートを小売価格の70%に引き上げると発表した。12月1日以降適用されるが、条件は、(1)すべてのKindle製品およびアプリケーションで読むことが出来、(2)出版社が権利を有するすべての地域で利用可能である、ことで、ブログは今回の対象から除外されている。KindleのWhispernetサービスで配信された場合のコストは、アマゾンと出版社が共同で負担する。[続きを読む]
書店の逆襲:欧州E-Book流通へのアプローチ
米国の動向を窺いつつ、独自のビジネスモデルを探っていた欧州の出版業界が、E-Bookビジネスで本格的に動き始めた。伝統的に書店が大きな力を持つだけに、書店のイニシアティブが目立っている。年末に相次いで発売された6型の電子ペーパー・デバイスを一種のデファクトとして利用し、独自ブランド+サービスを展開しようというもの。B&Nに近いが、ハードウェアへの投資を避け、異業種のパートナーシップを志向している点が欧州的と言える。版元団体と印刷会社が前面に出る日本が、かなり珍しい部類なのかもしれない。[続きを読む]
CLIP BOARD
- NTTドコモ、3G通信対応のシャープ製のカラー電子書籍端末「ブックリーダー SH-07C」を年末発売へ (hon.jp, 11/08/2010)
- Barnes & Nobles、"広告入り"無料電子書籍モデルを今週から実験開始か (hon.jp, 11/10/2010)
- ブリヂストン:電子ペーパーの新ブランド「AeroBee」お披露目 -「最も紙に近い媒体」 (毎日新聞デジタル, 11/10/2010)
- Appleと電通グループ、日本でiAdを展開へ (INTERNET Watch, 11/10/2010)
- 電子書籍紹介サイト「ダ・ヴィンチ電子部」開設 (INTERNET Watch, 11/05/2010)
- セルシスとプライムワークス、ドコモ冬モデル17機種に電子書籍ビューア提供 (マイコミジャーナル, 11/08/2010)
- スクリーン競争が再び激化か?カラー電子ペーパー採用の電子書籍端末が多数登場 (IT Media, 11/10/2010)
- 大型2画面タブレット「Kno」、価格は899ドル (IT Media, 11/10/2010)
- Camangi Japan、Android 2.2搭載の7型タブレット「Camangi FM600」 (IT Media, 11/09/2010)
- 縦書き実現へと向かうEPUBと標準規格の魅力 (IT Media, 11/09/2010)
- 電子書籍の現実と戦略(前編) - 事業に必要な「柔軟性」と「忠実性」の調和 (CNET Japan, 11/08/2010)
- 電子書籍の現実と戦略(後編) - Flash形式にならなかった理由と制作の現場 (CNET Japan, 11/09/2010)