EDITORIAL
ホットメディアのデザイン:Kindle的なるもの
マクルーハン流に言うと、印刷本はホットメディアだが、電子本は必ずしもそうではない。電子ファイルは環境によってホットにもクールにもなるが、一般的にはコンピュータで操作されるクールなものとして、その他多くのものと並んで存在する。そこではコンテンツが独立した(つまり作品性を持った)商品としての魅力を十分に発揮することはできない。E-Bookビジネスの最大のチャレンジは、いかに「ホット」を視覚的、機能的、サービス的に実現するか、ということにあり、そこに付加価値や競争力(つまりはお金)が存在するように思われる。ではコンテンツ(読者、ひいては出版ビジネス)を熱くさせる環境とは何だろうか。(写真=顔真卿「多宝塔碑」部分、752)[続きを読む]
ANALYSIS & COLUMN
「アマゾン・タブレット」への誤解
アマゾン・タブレットについての「噂」は日を追うごとに「常識」に変わりつつあり、ついには市場予測まで現れた。ミネアポリスの投資銀行、パイパー・ジェフリー社は上場企業でもあり、予測の精度が問われる立場にいるが、同社のアナリスト、ジーン・ミュンスター氏は、今年末のシーズン前に登場して2012年中に240万台以上を販売可能と見積もっている。しかしこれは過小評価と思われる。アマゾンが出すとすれば、2012年末時点で1,000万台あまり、少なくともNOOK Colorをしのぐスケールを達成する見込みがあると考えているからだ。[続きを読む]
「iPad雑誌にのめり込むのは愚の骨頂」!? (♥)
米国の広告専門誌AdAge (5/30)に掲載されたローリング・ストーン誌発行人のジャン・ウェナー氏(写真)のインタビューで、iPad雑誌について述べた発言が大きな話題となっている。デジタルに関しては業界きっての“守旧派”として知られてきた彼だけに、雑誌業界がiPadにのめり込むのは「愚の骨頂(insanity)」という発言自体の意外性はないものの、1年たってもiPad雑誌で儲かっている企業はほぼ皆無なだけに、なぜダメなのかを真剣に考えようという空気が強まってきたためだと思われる。本と雑誌はまったく異なるメディアでビジネスモデルも異なるからだ(活字中心のジャーナルを除く)。[全文=♥会員]
NEWS & COMMENTS
リコーがペーパーレス・ソリューションを世界展開
リコーは6月2日、ビジネス向けのタブレットeQuillとバックエンドのドキュメントサービスで構成するeWriterソリューション事業を立上げ、2011年夏から米国での提供を開始し、順次グローバル展開を進める計画を明らかにした(→リリース)。eQuill (イークィル)は、9.7インチのLCDタブレットで、3G/Wi-FiでeWriterワークフローサービスに接続し、「医療記録、文書管理、クレジット・保険の請求処理、家屋やビルの監査及び検査、民間警備会社・警察による報告業務」などのドキュメント業務をサポートする。カメラ、マイク、オプションでキーボードが付属。なおquillとは羽根ペンの意味。[続きを読む]
E-Bookをパーソナル化する電子サイン (♥)
ニューヨークで開催されたBEA 2011では、E-Bookをパーソナル化するサービスとして「電子サイン」が注目されていた。すでにいくつかの会社がこの分野に進出しており、たんに画像を貼り付けるだけでなく、ライブイベントやSNSと結びつけるものもある。E-Bookのデジタルな印象を薄め、ハイタッチでホットなものとすることで読者を惹きつけられれば、費用対効果は高く、効果が確認されれば様々なビジネスモデルと結びついて急速に発展する可能性がある。B&NはこれをNookのサービス機能としてサポートする。もちろん日本でも実現可能だ。[全文=♥会員]
ニールセングループがiPadアプリ/サイト診断レポート
iPadアプリの評価を行っているニールセン・ノーマン・グループ(NN/g)は、昨年登場したアプリを総括したレポート(pdf)を公表し、豊富な事例をもとに「おかしなものは減っているが、インタフェースは、なおユーザーを混乱させユーザビリティ上問題となるものが少なくない」と評した。バックボタンやホームページ、追加検索といった機能は実装されたものの、誤操作から復帰が面倒だったり、すぐに目次に行けない雑誌アプリなどもあることを指摘している。有難いことに全文を読むことが出来るので、これはタブレット・アプリデザインの必読文献だろう。[続きを読む]
ネット広告のオプトがパピレスを関連会社化
インターネット広告代理店のオプト(JASDAQ:2389)は5月26日、「電子貸本Renta!」「電子書店パピレス」などを運営するパピレス(同3641)を持分法適用関連会社にする意向を明らかにした。「コンシューマ事業推進のためデジタルコンテンツ領域での協業関係を強化する」ためと述べている。オプトは上場以前からパピレスに出資しており、4月21日時点で約15%に持ち分を増やしていた。6月27日の株主総会でオプトのコンシューマ事業領域担当執行役員がパピレスの社外取締役に加わる予定。E-Book事業とネット広告とのつながりが鮮明になってきた。[続きを読む]
PRESS RELEASE
- 人と本の出会いを演出する情報ポータルサイト「読むナビ」をオープン (図書印刷, 2011/5/30)
CLIP BOARD
- 紙離れ、そろって営業減益 製紙5社決算 工場被災、3社最終赤字 (Sankei Biz, 2011/5/25)
- パピレス、オプトの持分法適用関連会社に (IT Media, 2011/5/30)
- ドリームネッツ、wookのストア出店無料キャンペーン (IT Media, 2011/5/30)
- BenQ、Android採用の10.1型電子書籍リーダー「R100」 (INTERNET Watch, 2011/5/27)
- 【バロンズ】米アマゾン、電子出版事業に進出へ (ウォール・ストリート・ジャーナル日本版, 2011/5/30)
- 米3Mグループ、ドイツの電子書籍ベンチャーtxtr社に出資 (hon.jp, 2011/6/1)
- 米National Library of Medicine、医学関連の一次資料をデジタル化して提供開始 (hon.jp, 2011/6/1)
- 香港Arnova Technology、電子書籍閲覧向け格安7インチ・8インチAndroidタブレットを英国で発売 (hon.jp, 2011/5/31)
- 「スプラッシュスクリーンは嫌われる」米Nielsen Norman GroupがiPad電子雑誌アプリ等のUIデザインについて調査レポート公開 (hon.jp, 2011/5/30)
- 「Harry Potter」シリーズ出版元の英Bloomsburyが2010年度の業績を発表、電子書籍が急伸 (hon.jp, 2011/5/30)
- 電子書籍の販売ルートはKindleだけじゃない、日本製ボーイズラブ作品がGoogle eBookstoreやKoboに進出 (hon.jp, 2011/5/26)